プレーバック日刊スポーツ! 過去の11月16日付紙面を振り返ります。1998年の文化・芸能面(東京版)はTBSアナウンサー雨宮塔子さんの退社を報じたものでした。

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 TBSの人気アナウンサー雨宮塔子さん(27)が来年3月で退社することが15日、同局から発表された。「欧州で絵画の勉強をしたい」と1年前から退社を申し出ていたもので、このほど局側も了承した。この日の夜、日刊スポーツの取材に応じた雨宮アナは「大学を卒業した時に画廊に就職することも考えたぐらい絵が好き。若いうちに勉強しておきたかった」と、入社6年目での新たな旅立ちを決意の理由を説明した。

 雨宮アナはこの日、直筆のファクスを報道各社に送り、退社への決意を伝えた。「かねてから世界美術や食文化などの研究と自己啓発のために、ヨーロッパへ留学したいと考えていた」と、退社後の進路について明かした。前日にレギュラー番組で共演する堺正章(52)や永六輔(65)らに退社の意向を伝え、急きょ、この日の発表になった。

 この日の夜、東京・杉並区の自宅で本紙の電話取材に対し、雨宮アナは「1年以上前から局に退社希望を伝えていた。子供のころから絵画が好きで、大学を卒業する時に美術画廊に就職することも考えたぐらい。若いうちに勉強しておきたいという思いが強かった」と話した。来年3月退社後、最低半年は欧州に留学、その後については「何も決まっていません」という。TBSの先輩社員との交際も伝えられているが、「結婚ということはありません」と語った。

 茶の間で人気の高い雨宮アナの退社は、TBSにとっては痛手だが、1年間たっても雨宮アナの決意は変わらず、最終的に折れた形だ。今年3月、テレビ朝日の「ニュースステーション」司会者に転出した元局アナの渡辺真理さん(31)と雨宮アナは仲が良く、「あなたは円満退社した方がいい」とのアドバイスも受けていたようだ。局側も進藤昌子(27)小倉弘子(24)ら若手アナが育ってきたことで、雨宮アナを快く送り出すことを決めたようだ。

 雨宮アナは「チューボーですよ」(土曜午後11時30分)、「どうぶつ奇想天外!」(土曜午後8時)の2本のレギュラー番組に来年3月まで出演する予定だ。人なつっこい笑顔と、天然ボケのキャラクターで、バラエティー番組を中心に活躍してきており、茶の間の人気も高い。

雨宮アナは「いまは分からない」としているが、以前から芸能プロダクションからスカウトの手も伸びていただけに、留学を終えた後、タレントに転身する可能性も十分ある。TBSも「可能であれば、折に触れて当社の番組でのリポートなどを依頼したい」と話しており、フリーアナとして活動することもありそうだ。

◇雨宮アナに聞く◇

-退社を決意したのはいつごろですか

雨宮 1年以上前から考えていました。会社にもそれとなく自分の気持ちを伝えてありました。

-最後の決断はいつ

雨宮 ここ1カ月ぐらいばかりですかね。美術の勉強は若いうちがいいと言われていまして。そういっても、私はもう若くはないんですが。小さいころから美術が好きで、勉強したいというテンションが強い、今という時期を外したくないと考えました。

-留学先は

雨宮 留学する国とか学校とかはまだ決めていないんですが、欧州の大学で美術を学びながら、各国のアートフェアを見て回ります。

-仕事に忙殺され時間が欲しかったのでは

雨宮 疲れたということはありません。仕事は好きで楽しくやらせていただきました。それと、今後の仕事に不安があったというわけではありません。

-留学から帰ってきたらどうしますか

雨宮 本当に先のことは何も考えていないんです。まったく白紙です。

-芸能プロダクションからの誘いは

雨宮 そういうことはありません(きっぱりと)。

-渡辺真理さんにも相談した?

雨宮 真理さんには以前から私の気持ちを聞いてもらってました。決断を伝えると「塔子ちゃんらしいね」と言ってくれた。

-結婚するという話もありますが

雨宮 何かいろいろと間違って伝わっちゃっているんですよ。結婚ということはありません。海外に行ってしまうんですから結婚はもちろん、結婚を考える人もいないということです。

-両親は何と

雨宮 自分で考えて決めてから話しました。両親も賛成してくれました。

◆新たな人生へ30歳前の選択

テレビの花形アナの退社が相次いでいる。この10月にはフジテレビの近藤サトアナ(30)が歌舞伎俳優の坂東八十助(42)と結婚準備のため、富永美樹アナ(28)もシャ乱Qのまこと(29)との結婚を機に退社した。

女子大生の就職が氷河期といわれる時代に、民放キー局の女子アナ入社試験の倍率は1000倍を超す難関。普通のOLに比べ高収入でもあるのに、新たな出発を選択するケースが目立つ。一般企業でもOL生活5年、20代後半となると結婚問題にも直面する時期であり、現代女性が新たな人生を選択するのは増えているようだ。

看板局アナが退社しフリーとなって再出発するのは、TBSの渡辺真理アナ(31)、NHKの草野満代アナ(31)、日本テレビの永井美奈子アナ(33)ら数多い。育ててもらった古巣の局にその後も出演するには円満退社が最低条件。NHKの慰留をけり絶縁関係となった草野アナの例もある。雨宮アナは無難な選択をしたようだ。

★雨宮塔子(あめみや・とうこ)

本名同じ。1970年(昭45)12月28日、東京都生まれ。成城大文芸学部入学後は体育会スキー部に所属。同大卒業後、約1000倍の難関を突破し93年4月、TBSに入社。「チューボーですよ」(土曜午後11時半)、「どうぶつ奇想天外!」(土曜午後8時)などのレギュラー司会を担当。162センチ。血液型O。

※記録と表記は当時のもの