第29回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)が5日、決定した。石原裕次郎賞は人気シリーズ完結編「さらば あぶない刑事」が受賞した。授賞式は28日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで行われ、「さらば あぶない刑事」には裕次郎夫人の石原まき子さんから賞金300万円が贈られる。

 「さらば あぶない刑事」が石原裕次郎賞を受賞した。村川透監督(79)は「裕次郎さんの影響そのものを受けて育ったので、名前を冠した賞をいただくのはうれしいです」と話した。

 11年ぶりのシリーズ復活にファンも興奮。公開初日に都内の各劇場で中に入ることができない人があふれた。ファンが待ち望んだ完結編は、タカとユージを演じた舘ひろし(66)柴田恭兵(65)のコンビが挑む最後の事件を描いた。浅野温子(55)仲村トオル(51)を加えた4人は、ドラマから始まって30年ずっと変わらなかった。製作総指揮の黒沢満氏は「シリーズが愛された一番の理由は4人それぞれが勉強しながら、30年間本当によくやってくれたからです」。村川監督はタカとユージについて「何をしても許せるし、本当に楽しい。これから似たようなコンビは出てくるかもしれないが、この2人以上のコンビはない」。

 村川監督の映画人生のターニングポイントに裕次郎さんがいた。59年に日活に入社。劇場業務で裕次郎さん主演映画「嵐を呼ぶ男」の看板を掛けていた時、映画製作をやりたいと強く思った。日活撮影所の試験を受け直して裕次郎さんに出会った。

 77年に裕次郎さんが参加した英ヨットレース「アドミラルズ・カップ」の記録撮影のため1カ月間、裕次郎さん、まき子夫人らと寝食をともにした。「海が大好きで映画が大好き。とにかくスタッフを大事にする。いろんな人がいて映画ができる。上も下もないことを教えてもらいました」。

 裕次郎さんの思いを今も心に留める。「映画は見てもらって楽しんでもらわないといけない」。その言葉が「さらば あぶない刑事」に漂う、格好良くて楽しい作風につながっていた。 【小林千穂】

 ◆村川透(むらかわ・とおる)1937年(昭12)3月22日、山形県生まれ。松田優作さん主演映画「最も危険な遊戯」「蘇える金狼」「野獣死すべし」などを手掛ける。「あぶない刑事」シリーズはドラマのほか89年映画「もっともあぶない刑事」96年「あぶない刑事リターンズ」を監督。

 ◆さらば あぶない刑事 ドラマと映画で人気を博した「あぶ刑事」シリーズが放送開始30年で迎えた完結編。タカ(舘ひろし)ユージ(柴田恭兵)の破天荒な刑事コンビが定年を目前に控え、違法薬物市場を牛耳る組織の摘発に躍起になる。

 ◆石原裕次郎賞 石原裕次郎さんの遺志を引き継ぎ、石原プロモーションの全面協力で日刊スポーツ映画大賞に併設。ヒットした作品や完成度が高く大作感ある娯楽作に贈られる。賞金300万円。石原裕次郎新人賞は、裕次郎さんをほうふつとさせる将来性豊かな、映画デビュー5年以内の新人男優に贈られる。

 <石原裕次郎賞・選考経過> ノミネート段階から「さらば-」はまんべんなくポイントを獲得。「何十年ずっと楽しませてもらった」(石飛徳樹氏)と高評価。「社会現象を起こした」(伊藤さとり氏)と評された「シン・ゴジラ」を抑え、1回目で過半数獲得。