11月18日付で退団を発表している宝塚歌劇団の月組トップ娘役、愛希(まなき)れいかが1日、兵庫・宝塚バウホールで、トップ娘役としては17年ぶりの主演舞台となる「キューティーステージ 愛聖女(サントダムール)」の初日を迎えた。7日まで。

 サヨナラ公演前の最後の作品で、娘役として異例の“プレ・サヨナラ”主演作は、中世フランスの英雄ジャンヌ・ダルクが、21世紀の現代へと迷い込み始まる冒険劇。コメディー要素も入れ込み、優しく、強く、愛らしいヒロインをミュージカル仕立てで描く。

 演出の斎藤吉正氏によれば、作品は「『愛』と『希(望)』を胸に、仲間たちの夢に向けて戦う愛希の姿を描いた」という。

 愛希は09年入団。娘役では、元宙組トップ娘役の実咲凛音(みさき・りおん)らを生み、男役でも花組の柚香光(ゆずか・れい)、星組の礼真琴(れい・まこと)ら、各組の主力スターを多く輩出した黄金世代の95期。男役として入団したが娘役に転向し、1年足らずだった12年4月、月組前トップ龍真咲の相手役に迎えられ、トップ娘役に就いた。

 安定した歌唱力、卓越したダンス、柔軟な芝居心に磨きをかけ、15年4月「1789-バスティーユの恋人たち」でマリー・アントワネットを好演。男役出身らしい強さを内に秘め、はかなげなルックス、かれんさで魅了してきた。

 龍の退団後は、天海祐希に次ぐスピード就任となった現トップ珠城(たまき)りょうの相手役を務め、6年7カ月と、平成以降2番目の長期在位での退団が決まっている。

 その“ごほうび”として得た今回の主演作は、トップ娘役としては、02年に退団した月影瞳の「Over The Moon」(01年)以来。愛希は「信じられなかった。いつも男役さんの力によって舞台にいられるので…。でも、挑戦していきたい」と力を込め、今作に臨んでいた。

 退団公演は、8月24日に兵庫・宝塚大劇場で開幕する「エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-」。タイトルロールを演じ、タカラヅカに別れを告げる。