昨年2月に亡くなった俳優大杉漣さん(享年66)がナレーションを務め、遺作となった映画「世界一と言われた映画館」が5日、公開初日を迎え、東京・有楽町のスバル座で舞台あいさつが行われた。

山形県酒田市にあり、1976年(昭51)の「酒田大火」で火元となり焼失した映画館「グリーン・ハウス」に集まった人々の思い出をつづるドキュメンタリー映画。

「この映画には生きた言葉がありました」という大杉さんの書いた色紙と、ナレーション収録時のスチールを手にした佐藤広一監督(41)は00年に予算40万円で製作された、大杉さん主演の映画「黒いカナリア」にスタッフとして参加していたという。

「短編映画で作ろうとしていたものが、長編で作ることになった。文字じゃなく、ナレーションで作った方がいいと思って、顔見知りの大杉さんにお願いに行ったら即答でOKしてくれました。ずっと、大杉さんと一緒に仕事をしたいと思っていました」と話した。

ナレーションの収録は一昨年9月に東京・渋谷で行われた。佐藤監督は「原稿を作って持っていったら、大杉さんは『ここは、こうした方がいいじゃない』と言ってくれた。そして『2バージョン録って、あとで考えればいいじゃない』と。全部、大杉さんの言う通りになったんですけど(笑い)。裏方の気持ちが分かる方で『ここまで作り込んでいるんだ』と言っていただいた」と振り返った。

大杉さんは完成した作品を見て「心あるていねいなドキュメンタリー作品」と評したという。佐藤監督は「大杉漣さんの魂がこもった声の作品。映画が好きな人、全てに見てほしい」と話した。