講談の神田松之丞(35)の人気ぶりがすごい。来年2月に9人抜きで真打ちに昇進することが決まったけれど、実は数年前から昇進の話があり、時間の問題だった。

今月は池袋のあうるすぽっとで、師匠神田松鯉譲りの連続物「慶安太平記」の5日間完全通し上演を行っているが、A日程(5~9日)B日程(10~14日)ともにチケットが即日完売したほどで、10日間通うファンも十数人もいるという。5日の初日と、11日の2日目を見たけれど、観客を松之丞の世界に引き込む力には目を見張った。「慶安太平記」は全部で19席あるけれど、あまり面白くない「ダレ場」と言われる席もいくつかある。

そこを松之丞は巧みなくすぐりを入れつつ、聴く者の気をそらさない。客席は若い女性から中高年まで幅広いが、松之丞は「聞く方も体力勝負」と気遣いつつも、高座が照明で暑いことから「冷房をガンガン入れます。寒かったら、着込んでください」と演者優先を実践した。そういう毒舌を吐く松之丞の姿も、ファンにはうれしいようだ。

テレビや雑誌でも盛んに取り上げられる売れっ子ぶりで、講談界は松之丞の一人勝ち状態。落語界で「抜てき」された場合、嫉妬などから先輩などのイジメなどをよく聞くが、松之丞には無縁のようだ。快進撃もまだまだ続きそうだ。