俳優梅宮辰夫(うめみや・たつお、本名辰雄=たつお)さんが12日午前7時40分、慢性腎不全のため、神奈川県内の病院で死去した。

81歳。東映ニューフェースとして芸能界入りし映画「仁義なき戦い」など実録路線でスターに。6度のがんを経験も、今年10月までドラマ現場で俳優魂を見せていた。14日に密葬が営まれる。喪主は未定。お別れの会は所属事務所などが検討中。長女でタレント梅宮アンナ(47)妻クラウディアさん(75)も含め、幅広く活躍した。

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この日、梅宮さんが安置されている都内施設で事務所関係者が取材に応じた。今年3月から1日おきに人工透析を行っていた梅宮さんは、亡くなる前日も病院で人工透析を受けていた。梅宮さんは「疲れた」と言って病院で1時間ほど仮眠し帰宅したが、神奈川県真鶴町の自宅に帰宅後「腰が痛い」と言ってソファで午後5時すぎに寝てしまったという。クラウディアさんが異変に気付いたのは12日午前3時ごろ。梅宮さんの脈がなく、神奈川県内の病院に救急搬送された。

急変の連絡を受けたアンナは明け方に都内自宅を出て、午前7時ごろ病院に到着。アンナが着くまで蘇生措置が取られていたといい、梅宮さんは、クラウディアさんとアンナ、孫らに囲まれて約40分後に息を引き取った。梅宮さんは眠るように安らかな表情だったといい、クラウディアさんは夫に「いい顔してますね」と語りかけたという。

アンナは日中、気丈に仕事もこなしたが夜は遺体が安置されている都内の施設で父に寄り添った。明日14日、都内の斎場で近親者らによる密葬が営まれる。

関係者によると、梅宮さんは最近は「久米島に釣りに行きたい」と言ったり、「名俳優が亡くなってさみしい」など、17年に亡くなった盟友松方弘樹さんや渡瀬恒彦さんら昭和のスターをしのんでいたという。「昔の自分のことを知らない若い人に、番組を通して知ってもらうことができた。ハマちゃんに感謝している」と、ダウンタウン浜田雅功との番組共演を振り返ることもあったという。

現場に立つことを最優先する俳優としての強烈な意識は最後まで健在だった。梅宮さんは30代半ばに睾丸(こうがん)がんを患ったことをはじめ、がんと闘い続けてきた。最近では昨年9月に前立腺がん、今年1月に尿管がんの手術を受けた。6度のがんに見舞われたがそのたび乗り越えた。

最後の仕事は10月17日でテレビ朝日系「やすらぎの刻(とき)~道」(月~金曜午後0時半)の収録だった。梅宮さんは、石坂浩二演じる主人公の父で幽霊役を演じている。ドラマへは1年10カ月ぶりの復帰で、脚本を担当する旧友倉本聰氏の依頼を受け快諾した。昨年から今年にかけてのがんについては、手術を終えて公表した。病名が知られるとはつらつとした役が演じにくくなったり、キャスティングから外されることを懸念したからだという。

後輩からも「辰兄ぃ」「たっちゃん」などと呼ばれ慕われた。アンナの交際で親子対立する様子はマスコミの格好のネタとなったが、追いかけられても逃げずに対応し続けた。甘いマスクに鋭い眼光、迫力あるアクションで注目された後、渋い脇役で作品を引き締めた。大きなスターがまた1人、芸能界から去った。