「こんにちは赤ちゃん」「二人でお酒を」などのヒット曲で知られる歌手の梓(あずさ)みちよさん(本名・林美千代=はやし・みちよ)が先月、亡くなっていたことが3日、明らかになった。76歳。心不全による急死とみられる。

所属事務所によると昨年末まではとても元気な様子で、関係者も「急なことで驚いている」と話している。

    ◇    ◇    ◇

所属事務所によると、先月29日、今月1日に生放送予定だったショッピングチャンネルQVCの通販番組の打ち合わせでマネジャーが梓さんの都内の自宅を訪ねたところ、倒れていたという。死因は心不全とみられる。関係者は「昨年末まですごく元気な様子で、少し膝が悪い以外は病気1つなく、パワフルに仕事をされていた」と急死に驚いた。遺族の意思により今月2日に近親者のみで葬儀が執り行われたという。お別れの会の開催などは未定。

62年「ボッサ・ノバでキッス」で歌手デビュー。63年「こんにちは赤ちゃん」がミリオンセールスとなり日本レコード大賞を受賞。NHK紅白歌合戦にも初出場し、翌64年には昭和天皇の前でも同曲を歌った。

同曲大ヒット後に悩んだ時期もあった。06年に日刊スポーツの取材に応じた際には「何を歌っても『こんにちは赤ちゃん』には、かなわない。重すぎて耐えられない、と思った時期もあった」と明かした。74年発売の「二人でお酒を」はあぐらをかきながら歌うスタイルが話題に。大人の女のイメージにも転換しディナーショーの仕事も増え「お酒の席で赤ちゃんの歌は歌えないと考えて『こんにちは赤ちゃん』を封印していたんです」と話していた。

02年の40周年コンサートで同曲の封印を解いた。「この曲は私にとって世に出してもらうきっかけであり一番の宝物だから、大切にしよう。40年かかってそんな気持ちになれたから、アンコールの最後にやっと歌えたんです」と明かしていた。16年に作詞を手がけた永六輔さんが死去した際「永さんなしでは梓みちよという歌手は誕生しませんでした」とコメントした。

私生活では71年に俳優和田浩治と結婚し、翌年スピード離婚。子供はなく1人暮らしだったとみられる。近年も美容商品をプロデュースし通販番組に出演するなど、精力的に活動していた。関係者によると、つえを突いて歩くことも増えてきたため、歌謡イベントや音楽番組の出演は近年少なかったという。

◆梓(あずさ)みちよ 本名・林美千代。1943年(昭18)6月4日生まれ、福岡市出身。引き揚げ先の同市で育ち福岡女学院高に進学。中退し宝塚音楽学校へ進むが、在学中渡辺プロのオーディションに合格。「メランコリー」など多数のヒット曲がある。テレビ朝日系「新婚さんいらっしゃい」で桂三枝(現文枝)の2代目アシスタント、日本テレビ系「11PM」のアシスタントなどバラエティーや舞台でも活躍。NHK紅白歌合戦は10回出場した。