劇作家つかこうへいさん原作の舞台「蒲田行進曲完結編『銀ちゃんが逝く』」が中止になったことが13日、分かった。

東京・新宿の紀伊国屋ホールで7月4日から27日に上演予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大などを受けて中止に。新たに、つかさんの没後10年を迎える7月10日から3日間、同所で追悼イベント「朗読という名の演劇」の開催が決まった。

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「蒲田行進曲」は80年に同所で発表されたつかさんの代表作の1つ。東映京都撮影所を舞台に、主演映画撮影に意気込むスター俳優銀ちゃんが、子分の大部屋俳優ヤスに、自分の恋人小夏を押しつけるところから物語が展開していく。銀ちゃん役には俳優味方良介(27)、ヒロイン小夏役は先月乃木坂46を卒業した女優の井上小百合(25)、ヤス役は植田圭輔(30)の起用が決まっていた。

演劇公演は中止となったが、追悼イベント「朗読という名の演劇」の開催が決まった。朗読の形で同じ出演者たちが同作を表現する。演者と観客の距離はもちろん、観客同士の間隔をあけて動員は通常の半分以下にとどめる。作品をそれぞれ1時間以内の2部構成に分け、客席を1時間ごとに入れ替えて換気を徹底。稽古もリモートで行い、「向き合わず俳優のエネルギーを伝え合う演劇」がテーマの新様式の舞台に実験的に挑む。新型コロナウイルスの影響で、公演が続々と中止・延期となり、大打撃を受けている演劇界にとって新たなチャレンジだ。演出の岡村俊一氏は「まず、誰かが何かをしなければ始まらない」と言葉に力を込めた。

味方は「こういった形での発表になり複雑な心境です。何が正しくて何がそうではないのかということはわかりませんが、今の僕に出来ることはこの選択が全員にとって正しいと思うことです」とコメント。井上は「日本の芸術文化や、エンタメ、人々の心の豊かさまで奪われていくことが、悔しくて仕方ないです。しかしながら、自分にとっては新たな学びの機会をいただいているような気もしています。精いっぱい取り組む所存です」と誓った。

 

◆味方良介(みかた・りょうすけ)1992年(平4)10月25日、東京都生まれ。「熱海殺人事件」など多数の舞台・ミュージカルに出演。今年1月フジテレビ系ドラマ「教場」にも出演。176センチ。血液型A。

◆井上小百合(いのうえ・さゆり)1994年(平6)12月14日、埼玉県生まれ。11年8月、乃木坂46の1期生オーディション合格。今月1日から芸能事務所シス・カンパニーに所属。156センチ。血液型B。