コロナ禍に揺れた宝塚歌劇、20年最後の開幕作「ミュージカル『シラノ・ド・ベルジュラック』」が4日、大阪市北区のシアター・ドラマシティで開幕(12日まで)した。主演は、専科スター轟悠。星組選抜メンバーを引き連れ、17世紀フランスを舞台に、大鼻を持つ剣豪詩人を好演した。

もともと、ギリシャ彫刻のような彫りの深い顔立ちの轟。その顔に、大きな鼻。元トップの専科スターは、ちゃめっ気たっぷりに剣豪詩人を演じ、切なさ、深い情愛を表現した。

戯曲をもとにした今作は、1897年に初演。宝塚では95年「剣と恋と虹と」として舞台化された。主人公は、剣豪詩人シラノ・ド・ベルジュラック。大きな鼻にコンプレックスを抱きつつも、剣の腕、文才ともに卓越した才能を持つ。

国内ミュージカルでは鹿賀丈史の当たり役として知られ、轟も毎回、専門家が15分ほどかけて「つけ鼻」を装着して臨む。ポスター撮影時の「つけ鼻」よりも、轟がこだわり抜き、さらに高い「つけ鼻」に仕上げた。真剣がゆえにくすっと笑える-。だが、喜劇には寄せない。

轟は「コケティッシュにはならないように、友情も、仲間との結びつき、妹のようにかわいがっているロクサアヌ(ヒロイン)への心情の変化で、引き込んでいけたら」と言い、役柄を固めてきた。

主人公が持つコンプレックスも、自身も生きざまが「不器用」と言い、共感。「皆さん自分の立場でそれぞれあると思う。ご自身を重ね合わせる部分が多く含まれているのではないか」とも呼びかけている。

轟と、瀬央ゆりあ、天寿光希、極美慎ら星組選抜メンバー32人による今作。ヒロインは実力が確かな8年目の小桜ほのかが務め、轟演じる主人公のいとこ役で、瀬央ふんする新任士官にひかれていく役どころ。轟、瀬央らを相手に、歌、芝居に堂々と渡り合った。