女優の吉永小百合(76)が18日、大阪市内で行われた主演映画「いのちの停車場」(成島出監督、5月21日公開)の合同取材会に出席した。

金沢の診療所を舞台に医師と患者の心の交流を描く物語。新型コロナウイルスで社会全体が命の大切さに直面する中、62年の女優人生で初挑戦した医師役で「命」に向き合った。

コロナ禍の中、撮影は昨年9月にスタート。撮影前に、吉永は病院で実際に医師の仕事を見ながら役作りを計画していたが、コロナ禍で病院に行くこともできず「悶々としていた」と振り返った。

その後、救命救急の医師と在宅医療の医師が撮影所を訪れ、細かくアドバイスをしてくれたという。劇中では救命救急の医師から在宅医療専門医になる白石咲和子を演じる。「命を助ける立場と、命に寄り添う立場。2役を演じているようでした。大変な時期なのに、医療従事者の方がすごく力をくださった」と感謝した。

合同取材会に出席した南野陽子(53)は吉永が演じた迫真のラストシーンについて「これは吉永さんと成島監督が(映画を)見る人に宿題を与えたと思った。見る人のその時の状況でとらえ方がまったく違うかもしれない」と話した。

吉永はラストシーンについて「台本が出来上がり、打ち合わせをしているときに新型コロナウイルスがまん延するようになった。一緒に仕事をしてきた志村けんさん、岡江久美子さんがご家族と会うこともできずにお亡くなりになられるという現状を見せられて、胸が詰まった」と話し、だれも経験したことのないコロナ禍の中、「ずっと撮影中、悩んでいた。最後のシーンを撮っている時も、心が揺れて、どうしようかと。でも、それを出したほうがいいんじゃないかという思いで演じた。答えは見つからないんです」と声を詰まらせた。

成島監督は「吉永さんが真っ白になった。真っ白のまま演じきってくれた。奇跡が起きた」と振り返った。122作目となる映画で吉永は「命の大切さ」と真摯(しんし)に向き合った。