俳優池松壮亮(31)が庵野秀明監督(61)の映画「シン・仮面ライダー」(23年3月公開)に出演することが発表された。本郷猛役を演じる。

発表会見は取材していないが、池松は会見数日前にアクション練習で右足を捻挫し、松葉づえ姿で登場していたという。「あの…靱帯(じんたい)…部分? なんて説明すればいいかわからないので、『主人公が改造手術にちょっとだけ失敗して、撮影には支障ないようだ』と書いていただければ」とウイットに富んだコメントをしていたようだ。

同発表の約1週間前に、第43回ぴあフィルムフェスティバル2021コンペティション「PFFアワード2021」表彰式で、審査員を務めた池松を取材する機会があった。

多くの名監督を輩出し、映画監督への登竜門とも呼ばれる同アワード。今年は489本の応募から18作品が入選していた。

グランプリを発表する大役を担った池松は、「素晴らしい映画人の方々と、クリエーターの方々と(映画祭の)歴史の一端を担えてうれしい限りです。どの作品も素晴らしい作品ばかりでした。それぞれの映画のここまでの旅路を心から祝福します」と映画関係者、若手の入選作品のクリエーターたちに語りかけていた。

池松の映画祭総評に思わず聞き入ってしまった。「優劣はついてしまいましたけど、映画に対する愛情を共有しているというその1点に関しては、全く優劣が無く、本当に素晴らしいものばかりでした」とスピーチ。

池松は、俳優として数々の映画賞を受賞し、日本映画界に無くてはならない存在だ。「より不確かな時代を生きていることは間違いないですし、私たちの未来はお先真っ暗だといわれていますし、僕もそう思います。ただ、『そんなもの知るか』です。今、生きているのはぼくらなわけで、みなさんがこれから自分自身の心の奥底の声に忠実に、自分と対峙(たいじ)する世の中と向き合って、自分自身のクリエーティビティーを探求しつつ、仲間とシェアしながら、映画をともに分かち合っていけたら、僕自身はうれしいなと思います」と映画への熱い思いを口にした。

続けて「映画の世界は、世の中全体そうですけど、変化を求めていると思います。何か、変わらないことを受け入れる優しさというか強さというか、そして、変えられることを変えていく勇気をみなさんとともに、新しい時代を作りながら、考えていけたらうれしいなと思っております。また、みなさんと映画を共有できる日を楽しみにしております」。万雷の拍手だった。池松らしい、独特なテンポと言葉遣いに魅了された。

映画を主戦場とする池松は、バラエティー番組などに出ることが少なく、そのパブリックイメージは役によるものが大きい。パーソナリティーはあまり知られていない。口べたなのではという印象さえ受ける。しかし、映画の舞台あいさつやインタビューではそのワードセンスで、聞き手を楽しませてくれる。思わずメモを忘れて聞き入ってしまったことが何度かある。

自分の哲学を、ありきたりではない自分の言葉で丁寧に紡いでいくことで、人を引きつけていく。池松の仮面ライダー。2年後が楽しみだ。