遠藤雄弥(34)が8日、東京・TOHOシネマズ日比谷で行われたフランス、ドイツ、ベルギー、イタリア、日本合作の主演映画「ONODA 一万夜を超えて」(アルチュール・アラリ監督)初日舞台あいさつで、俳優を選んでいなかったら、どの仕事を選んでいたかと聞かれ「僕はプロレスラーになっていた」と明かした。

映画は、太平洋戦争後も任務解除の命令がないままフィリピン・ルバング島で過ごし、約30年後の1974年(昭49)に51歳で日本に帰還、14年に91歳で亡くなった旧陸軍少尉の小野田寛郎さんの史実を元に製作された。遠藤は劇中で小野田さんの青年期を、成年期は津田寛治(56)とダブルキャストで演じた。

遠藤は、司会の質問に「恐らく…個人的には、間違いなく俳優という人生を選んでいなかったら、もう少し苦労がない人生だったんじゃないかと正直、思う」と本音を語った。その上で「でも、俳優をやらせていただいているから、考えることが、人生の豊かさにつながっていると思う。実際の小野田さんもルバング島に30年いた壮絶な時間は孤独、仲間の氏とか会った中、きっと人生の豊かさに繋がっていらっしゃたのではないかと思う」と小野田さんの心中を推し量った。

そして「俳優じゃなかったら、僕はプロレスラーになりたかった」と笑みを浮かべた。津田が舞台あいさつの中で、若手俳優たちの芝居のぶつかり合いを「格闘技」と評したが「子供の時からプロレスを見るのが好きで、武藤選手に憧れていた。少年時代に(テレビ朝日系)『ワールドプロレスリング』を見ていた時間が、アクションに少しは生かされているかなと勝手に思っています」と、当時、新日本プロレスで活躍していた武藤敬司(58、現プロレスリング・ノア)がヒーローだと明かした。

約2年前にカンボジアで行われた撮影は2カ月に及んだ。俳優陣は、戦争シーンを演じるため、過酷な減量を経て撮影に臨んでいたが、遠藤は「お水だけが合わなくて、もれなく(俳優陣は)全員、熱を出しながら満身創痍(そうい)で撮影を敢行する時間もあった。作品にピッタリだと思う」と振り返った。

すると、劇中で部下の赤津勇一を演じた井之脇海(25)が「水と言えば、遠藤さんの泊まっていたホテルが(撮影)途中に大雨が来て、屋根が崩壊して荷物全部がびしょぬれの水事件」と明かすと、遠藤は「撮影が終わって、部屋に帰ってきたら天井が抜けていて…雨漏りで水浸し」と、飲料水含めて“水難続き”のカンボジアロケだったと苦笑した。

「ONODA 一万夜を超えて」は、7月のカンヌ映画祭(フランス)ある視点部門でオープニング上映された。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、遠藤、津田をはじめ主要キャストは、仕事の都合もあり現地への渡航と映画祭への参加がかなわなかった。そのため、この日は映画館の中にレッドカーペットが敷かれカンヌ気分を演出。さらにビデオレターを寄せたアルチュール・アラリ監督(40)からはカンヌ産のワインも贈られた。遠藤は「こんな素敵なワインをいただいて…小野田さんの地元の和歌山の地酒を持って、必ずフランスに行きたい」と、同監督をはじめスタッフとの再会を誓った。

コロナ禍のため、そもそも20年公開を目指していた製作が遅れた上、試写なども行われず、この日が日本の観客が作品を目にする、最初の機会となった。この日の舞台あいさつには仲野太賀(28)とイッセー尾形(69)も登壇した。