俳優でタレントの松尾貴史(61)が27日、都内で行われた第56回紀伊国屋演劇賞の贈呈式に出席し、昨年末の闘病中に聞いたという受賞の喜びを語った。

二兎社公演「鴎外の怪談」における森林太郎(鴎外)の演技が評価され、個人賞を受賞した。松尾は昨年12月14日に肺塞栓(そくせん)症と診断され、15日から緊急入院。当時は「鴎外の怪談」で地方を回っている最中だったが、同16日から長野県で予定していた公演などが中止となった。松尾は「(病院で)明日は新幹線で長野に入って、明後日は本番が、と言うと(医者から)『冗談じゃない。死にますよ』と。外界と完全に遮断される中、看護師さんが電話の子機を持ってきて。病院のICUで選出の知らせを受け取りました」と振り返った。

12月に予定していた長野、滋賀公演が中止となる中での受賞に「襲う病あれば拾う神ありという」と苦笑いを浮かべつつ「自分のせいで地方公演が2つ中止になってしまって嫌悪する中で知らせをもらって。それを励みとして治療に専念するやりがいも生まれました。本当にうれしく思っています。関わって頂けたみなさん、本当にありがとうございます」とあいさつした。

このほか、団体賞に「正義の人びと」「雪の中の三人」「戒厳令」などの舞台を制作した劇団俳優座、個人賞には松尾のほか、パルコプロデュース公演「ジュリアス・シーザー」におけるブルータスの演技が評価された女優吉田羊(47)、NODA・MAP公演「フェイクスピア」の衣装を手がけた、ひびのこづえ氏(64)、ケムリ研究室公演「砂の女」で女を演じた女優緒川たまき(50)、イスラエルとパレスチナ解放機構の間で結ばれた93年のオスロ合意を題材とした舞台「Oslo(オスロ)」と世田谷パブリックシアター公演「森 フォレ」の演出を手がけた上村聡史氏の4人が選ばれた。