唯一無二のアナウンサーになる。3月末でフジテレビを退社した久代萌美アナウンサー(32)は、4月から吉本興業とマネジメント契約を結び、新たな1歩を踏み出した。

多くの選択肢がよぎる中で決断に至った思い、夫で人気YouTuberの、はるくん(26)との生活で感じたこと、これから目指していく理想像などを聞いた。全3回に分けてお届けする。【取材・構成=松尾幸之介】

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大手キー局のフジテレビから、お笑い界最大手の吉本興業へ。初めて吉本に局アナ経験者が加入した。久代アナは「ここ(吉本)を選ぶのが自分の中でもしっくりくるし、面白いなと思って。気づいたら、流れ着いていました」と笑う。ほかの選択肢として、専業主婦や、一般企業への転職、大学時代は細菌についての論文を書くなどした“リケジョ”でもあり、大学院進学も考えた。

「会社を辞めるってすごくマイナスで、何かを失っちゃう決断に見えますけど、いざ辞めるとなると、逆に無限の可能性があるんだなとも思えて。そうなると普通以上にやりたいことが一気に脳裏をよぎるんです。アイスクリーム屋さんでバイトしたいなとか(笑い)。今まで絶対ありえなかったことが可能になるということで、いろんな選択肢をいっぱい考えました」。

最終的に吉本を選んだのは、直感的に感じた面白さに加え、安心感を抱いたから。局アナ時代は「ワイドナショー」でダウンタウン松本人志や東野幸治、「さんまのお笑い向上委員会」で明石家さんまと、吉本所属の大御所をはじめとする多くの芸人たちとの共演を経験。「私を育ててくれたのはフジテレビで、加えて芸人さんに育ててもらったなという思いもあるので。感謝の気持ちとか、ついていきたいというところから選びました。やっぱり、知っている先輩がいるサークルに入った方が楽しいとかあるじゃないですか。よく知っている方がたくさんいるところに飛び込む方が、アットホームな感じがしていいなと思いました」。

フジテレビ在籍最終年となった21年度の7月に、アナウンス室からネットワーク局に異動した。12年にアナウンサーとしてフジテレビに入社後、初の異動だった。「もちろん専門職として(フジに)入っているので、やり残したなという気持ちはありました」と今回の決断への影響を認めつつ「でも、私の中でそんなにそれは大きな理由ではなくて。すごく迷いましたよ」と断りも入れる。

もともとバラエティー番組やドラマ現場のスタッフ、営業など、他部署の仕事にも興味はあった。そして何より、約9カ月間在籍したネットワーク局での仕事が自身の視野を広げることにもつながったという。同局での仕事内容を聞くと「よくぞ聞いてくれました」と優しく教えてくれた。

「ネットワーク局では、系列局のみなさんと『27時間テレビどうしましょう』とか『映画の出資どうしましょうか』とか、そうした話をフジテレビを代表して取りまとめるというか。それこそ大阪の局で仕事をすることもあったり。今まではアナウンサーとしてお台場、東京にしか立っていなかったので、こんなに日本中でつながりがあるということを知りませんでした」。

業務にあたる中で、系列局をはじめ、他局も含めたつながりの重要性もあらためて体感した。「横のつながりというか、他チャンネルの系列局も入れると、まだまだたくさんあるなと。でも、ネットワーク局にいなかったら、そんなことを考えることもなかった思うので。視野も広げてくれたというか。楽しかったですよ。ネットワーク局の仕事に興味を持って、逆にそこでの経験が今でも生きていますね」。

悩んだ末に「やり残したこと」を追い求め、最後は退社の決断をした。4月2日に吉本と契約。スケジュールは次々と埋まり、イベントやテレビ番組出演、3月開局のBSよしもとでのナレーション業など、引っ張りだこの毎日を送っている。「(吉本に)一応、アナウンサーでいたいという大枠だけは伝えて。あとはマネジャーさんがOKだという仕事に信じてついていくという感じです。局アナ時代以上に働いているなと、うれしい悲鳴ですね」。

芸人らからは「吉本はやめとけって言ったのに」「何で来ちゃったの」などとイジられる一方、「入ってくれてありがとうね」と感謝を伝えられることもあるという。「歓迎してくれてうれしいなと思います。局員から新しいところに行ったとみなさん思うかもしれないですけど、私は気持ち的に変わった感じはしなくて。よりホームに近づいたというか。イメージで言うと実家に帰ったぐらいの。なじみがあるところにまた来たという感じがするので、新しい環境で緊張するとかはないです。逆に心強いですね」。

吉本生活を始めて約1カ月。今のところ「やめておけば良かった」と感じたことはもちろんない。新天地での新たなスタートを、今は存分に楽しんでいる。(続く)

 

◆久代萌美(くしろ・もえみ)1989年(平元)10月6日、東京都生まれ。首都大学東京(現東京都立大)時代は細菌の研究などに励んだリケジョで、12年フジテレビ入社。「笑っていいとも!」「さんまのお笑い向上委員会」「ワイドナショー」などにレギュラー出演し、22年3月末に退社。吉本入り後はBSよしもとの「別冊!CHEF-1グランプリ~出場者の店全部食べます!~」のナレーションのほか、バラエティー番組などにも出演。趣味はドラム、料理、アニメ・ドラマ観賞。162センチ。血液型A。