ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領(44)が、17日に南仏で行われた第75回カンヌ国際映画祭の開会式にサプライズでビデオ出演し、演説を行った。

元俳優でコメディアンのゼレンスキー大統領は、名優チャーリー・チャプリンが第2次世界大戦中に独裁政治を行ったナチス・ドイツの指導者ヒトラーを批判したサイレント映画「独裁者」(1940年)を例に、「独裁者は死に、人々から奪った力は人々に戻るだろう。自由は決して滅びることはない。映画界は沈黙していないことを証明する新しいチャプリンが必要です」と力強くスピーチ。「私たちには、いつも最後に自由が訪れることを示す映画が必要」と訴え、観客は総立ちで拍手を送った。

ハリウッド・レポーター誌によると、ゼレンスキー大統領はロシア軍による侵攻についても言及し、ベトナム戦争を題材にしたフランシス・フォード・コッポラ監督の「地獄の黙示録」(1979年)に登場する有名なセリフ「朝のナパームは格別だ」を引用し、ウクライナへの侵攻と爆撃も朝に始まったと述べたという。

同映画祭の主催団体は3月1日に声明でウクライナ支援を表明し、今年はロシアの公式代表団並びにロシア政府の関係者の出席を拒否すると発表していた。

世界3大映画祭の1つとして知られるカンヌ国際映画祭は28日まで開催され、最高賞パルムドールを競うコンペティションには、是枝裕和監督の「ベイビー・ブローカー」を含む21作品が出品されている。また、ウクライナ南東部マリウポリを舞台にしたドキュメンタリーを撮影中にロシア軍に拘束され、殺害されたリトアニア人監督の遺作「マリウポリ2」も特別上映されることが発表されている。(ロサンゼルス=千歳香奈子)