日本ドラマ史に残る伝説のドラマ「私立探偵 濱マイク」が、02年7月の放送開始から20周年を迎えた今月、動画配信サービス「Hulu」で配信がスタートした。主演の永瀬正敏(56)を筆頭に多彩な才能がジャンルを超えて出演。映画の製作ノウハウにこだわり撮影は16ミリフィルムで行い全12話、異なる監督が色を出した1話完結などの斬新さが語り継がれ、新作の要望は今も絶えない。永瀬が配信の先に見据える思いを語った。【取材・構成=村上幸将】

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永瀬は「20年前のドラマ、キャラクターが生き延びているわけで、役者冥利(みょうり)に尽きる。幸せ」と感慨深げに語った。

94、95、96年に公開された林海象監督による映画3部作が原作で、00年前後にフィルムでのドラマの撮影が難しくなってきたことを受け企画を具体化。マイク以外の登場人物、設定を一新し新たな世界観を構築し「常識の打破」をテーマに

<1>テレビと映画の製作ノウハウを融合

<2>テレビ界で敬遠された全編、フィルムでの撮影

<3>映画、CM、音楽、舞台の世界で最も刺激的な12人のクリエーターを監督に

とのコンセプトを立てた。行定勲、中島哲也、岩松了、石井岳龍、故青山真治氏ら日本を代表する監督が集い、海外からも英国のアレックス・コックス監督が11話を担当。オープニング映像はプラダやグッチなどを手掛けた、英国の写真家グレン・ルックフォードの日本テレビ界初の撮りおろし&監督作だった。永瀬は「いろいろなジャンルや海外から参加いただくのは今も、あまりないんじゃないか。乗らないと革新的なものは出来ない」と振り返った。

出演陣も、俳優にとらわれず歌手から芸人まで人気者をそろえ、その多くが後年、それぞれのジャンルで一時代を築いた。中でも2話「歌姫」は、前田良輔監督が歌手UAの楽曲「温度」にインスパイアされて脚本を書き、UA本人が出演し歌唱した。永瀬は「好きな俳優に監督がオファーし、快く出てもらった。UAの歌はすごかった。説得力は、かなわないじゃないですか」と熱っぽく語った。

「私立探偵 濱マイク」に憧れて俳優を目指した高良健吾のように、現代の映画、ドラマ界に多大な影響を与えてきた。永瀬は「立ち上げた時は、種をまきたい…いつか芽が出て、花が咲けばと、ずっと思っていた。みんなで必死に作った思いが、作品にちゃんと残っているんだなぁって改めて感じますね」と語った。

Amazonプライムビデオでも配信が始まる。「今、見ると珍しいものが、いっぱい注入されていると思う。今の若い人が、どう受け止めてくれるか聞いてみたいし見てみたい。どこかの誰かに見ていただき、芽が出て花が咲けばいいなと思います」と期待した。

撮影現場では、いまだに「『濱マイク』もう、やらないんですか?」との声がかかる。配信が盛り上がれば、新作を製作する可能性はあるのだろうか?

永瀬 どうでしょうね。まぁ…すごく慎重に準備しますかね。まずロケ場所が残っていないので、そこから構築しなきゃいけない。多分、マイクは、どこか行っちゃっていたんでしょうから、戻ってきて何もないところから始めないと。新しいクリエーターも、世の中をよく知っている若手もいっぱいいるから、その人たちが血を注ぎながら、マイク的な世界観のものを…あっていい気がします。何かが盛り上がると良いですね。僕もマイクには、どこかで生きていて欲しい。

その上で「(今、演じるとして)もう走れないですね。自転車か何かに乗っている役にしないと」と言い、笑った。

◆「私立探偵 濱マイク」 濱マイク(永瀬)は横浜・黄金町の映画館「横浜日劇」に事務所を構え、本名で活動する、まれな私立探偵。昔は“狂犬マイク”の名で知られる厄介者で、大の女好き。一見、不良探偵だが、唯一の肉親で同居する妹の茜(中島美嘉)に弱く、友人思いで、目先の金より情に流されて仕事をするため、いつも金欠。家賃を滞納して、事務所は2階から屋上のビアガーデンの跡地に追いやられたが、愛する横浜の街を疾走する。