吉永小百合(77)が、山田洋次監督(91)の新作映画「こんにちは、母さん」(来年9月1日公開)で大泉洋(49)と初共演し、母子を演じることが2日、分かった。吉永が「大泉さんとは初めてなので、ちょっと心配でしたが、明るくて、優しくて、リハーサルの時から励まされています。すてきな親子になりたい…なります!」と言えば、山田監督作品に初出演の大泉は「正直申し上げて、あの吉永小百合さんから、大泉洋は生まれない。私もそう思います」と笑った。その上で「しかし、決してそうは思わせない山田監督の演出、吉永さんの演技、映画とは偉大だと改めて感動しております。今や私は吉永さんの息子としか思えません」と自信を口にした。撮影は9月下旬にクランクインした。

「こんにちは、母さん」は、日本を代表する劇作家、演出家で劇団「二兎社」を主宰する永井愛氏の、同名の人気戯曲が原作。妻から離婚を迫られ、人生に悩む会社人間の息子が2年ぶりに実家に帰ると、母が恋人らしき存在がいるなど生き生きしており、自分の人生を生き直そうと共同生活する物語。01年と04年に東京・新国立劇場で上演されると、07年にはNHKでドラマ化。舞台、ドラマともに、加藤治子さんと平田満が母子を演じた。

吉永は劇中で74歳の母・神崎福江、大泉は47歳の息子・昭夫を演じる。昭夫が大会社の人事部長として神経をすり減らし、家では妻との離婚問題、大学生になった娘との関係に頭を悩ませる中、久しぶりに東京下町の実家を訪れると、かっぽう着を着ていたはずの福江は、あでやかなファッションに身を包み、恋愛までしているようで生き生きと生活していた。昭夫は久々の実家にも、自分の居場所がなく戸惑うも、おせっかいがすぎるほどに温かい下町の住民や、これまでとは違う母と新たに出会い、次第に見失っていたことに気付かされていく物語。

山田監督は01年に初演の舞台を見て、大変気に入り、映画化を検討。その際は実現しなかったが、21年に吉永と会った中で原作を思い出し、現代に置き換えれば吉永を主演とした映画ができると思いオファーした。一方、大泉の存在は以前から注目しており、15年12月に東京都葛飾区の柴又寅さん記念館がリニューアルされた際「男はつらいよ」の主人公・寅さんを新たに演じて欲しい俳優No.1に大泉の名が挙がったと聞き「いいんじゃないかな。別な寅さんができるかも知れませんね」と笑みを浮かべた。18年6月には、自ら脚本を務めたTBS系ドラマ「あにいもうと」に大泉が主演。その際の演技や大泉が所属する演劇ユニット「チームナックス」の舞台などを見て、これまで演じたことのないような下町の元気な女性に挑戦する吉永の息子役は、大泉しかいないとオファーした。

クランクイン3カ月前の6月下旬に、吉永と大泉が共演者として初顔合わせした。その際、大泉が「吉永小百合さんからは僕は生まれない」と繰り返すと、123本目の映画となる吉永と90本目の監督作となる山田監督も大笑い。吉永も「本当の親子に少しでも近づけるように」と「母と暮せば」で息子を演じた二宮和也と同様、大泉にも幼少期から青年期までの写真をリクエストし、母子のような雰囲気が生まれていったという。

吉永と山田監督にとって、タッグを組んだ08年「母べえ」と15年「母と暮せば」に続く「母」3部作となる。「母と暮せば」7年ぶり、6作目となる山田監督作品への出演に、吉永は「山田学校に再入学し、原点に戻って監督の思いをしっかり受け止められるよう、努めます」と思いを語った。

大泉は「山田洋次監督の映画に、吉永小百合さんの息子役として出演することとなりました、大泉洋でございます。まさか私がこのような光栄なあいさつをする日が来ようとは、夢にも思っておりませんでした」と率直な思いを語った。その上で「役の重責に押しつぶされそうではありましたが、リハーサルで、山田監督の力強くも細やかな演出を受け、海より深い愛情をたたえた吉永さんの母親としてのお芝居を目にし、今は感謝と、喜びと、期待でいっぱいであります」と語った。

山田監督は「隅田川沿いの下町、古びた家並みの向こうにスカイツリーが高々とそびえる『向島』にカメラを据えて、この江戸以来の古い町に暮らす人びとやここを故郷として行き来する老若男女たちの人生を、生きる喜びや悲しみを、スクリーンにナイフで刻みつけるように克明に写し取り、描き出したい」と語った。