吉岡秀隆(52)が21日、沖縄県・与那国島で行われた主演映画「Dr.コトー診療所」(中江功監督、12月16日公開)凱旋(がいせん)プレミアに登壇。03年にフジテレビ系で放送された連続ドラマ第1期から撮影を続けた同島の島民に、16年ぶりの新作、そして初の映画を世界最速で届けた。会場いっぱいに詰め掛けた200人の島民から湧いた「コトー先生」の声に「ただいま。胸がいっぱい」と喜びをかみしめた。

吉岡は「皆さんに最初に見て欲しいと思い撮影した」と力を込めた。映画館がなく、交通費だけで3万円をかけて沖縄本島まで行かないと映画を見ることが出来ない島民に届けたかった。その強い思いがあったからこそ「昨日は緊張して眠れなかった」と明かした。

03年の撮影開始当初は、何をやっているか理解してもらえず、同7月3日の第1話放送2時間前の午後8時に、劇中にも登場する久部良漁港で先行上映会まで行った。吉岡が演じた五島健助同様、島民から次第に受け入れられ歩んできた。

シリーズ開始当初、生まれていなかったであろう子どもたちからも「コトー先生」と歓声が上がった。吉岡は「語り継がれ、知ってくれている。この島でコトー先生は生きていたんだと思った」と感慨深げに語った。妻の彩佳を演じた柴咲コウ(41)も「子どもにも見せたくなる、語り継いでいきたいと思ってもらえているのかな」と続いた。

汗と涙がしみこんだ志木那島診療所のセットも訪ねた。吉岡は「五島健助として来ることはもうありませんが、心の中でコトーを生き続けさせてやってください」と、やり尽くした完結編であると島民に告げた。【村上幸将】

◆「Dr.コトー診療所」 累計発行部数1200万部超の漫画家・山田貴敏氏の同名漫画が原作。2003年(平15)にフジテレビ系で連続ドラマ第1期が放送され、最高視聴率22.3%。04年には特別編と「Dr.コトー診療所 2004」が、06年には連続ドラマ第2期が放送され、最高視聴率25.9%を記録。それから16年ぶりの続編として、初めて映画化。ドラマシリーズでも演出を務めた中江功監督、脚本も連続ドラマ全作を執筆してきた吉田紀子氏と、スタッフが再集結した。 ◆「Dr.コトー診療所」 本土からフェリーで6時間かかる、西端の美しい島・志木那島に19年前、東京からやって来たコトーこと五島健助(吉岡)は、島のたった1人の医師として島民全ての命を背負ってきた。長い年月をかけて、島民との信頼関係を作り上げ、島にとってかけがえのない存在であり、家族となった。そのコトーも52歳。数年前に結婚した看護師の星野彩佳(柴咲)も妊娠7カ月で、もうすぐ父親になる。島民の皆が「コトーがいるから大丈夫だろう」と思う穏やかな日々の中、志木那島も過疎高齢化が進み、、ある変化が忍び寄っていた。