岸井ゆきの(30)が6日、都内で、主演映画「ケイコ 目を澄ませて」(三宅唱監督、16日公開)先行特別上映会に出席した。

聴覚障害のあるプロボクサーの小笠原恵子さんをモデルにした物語。岸井は、生まれつき両耳が聞こえないボクサーのケイコを演じた。ベルリン国際映画祭で上映された同作を「私の夢をかなえてくれた作品」といい、「3大国際映画祭に行くことが夢で、フィルムで撮る現場に入ることも夢だった。私の夢と魂が入った映画がやっとやっと公開されるので、うれしいです」と笑顔を見せた。

イベントには、アマチュアボクサーとしてロンドン五輪を目指した南海キャンディーズ山崎静代(43)も登壇した。作品を鑑賞し「ただのボクシング映画ではなく、1人の女性として戦う葛藤に共感できる部分がいっぱいあった。熱い映画だと思いました」と感想を語った。

現役時代を振り返り「『相手を殺す気にならないと負けるぞ』とよく言われていたので、自分をそういうところに持っていくのも難しかった」と心身のバランスを維持することに苦労したことを明かすと、岸井は「まさに練習中の自分にもそういう気持ちがあった。ここまでやったけど、あと1歩のパンチがいけないとか。でも葛藤を続けることで、できるようになる。トレーニングの中からたくさんの感情を学んだので、それが伝わったんだなと思うとすごくうれしい」と喜んだ。

同作に出演し、「百円の恋」「万引き家族」でもボクシング指導を担当した松浦慎一郎(40)は、今作での岸井を「正直、今まで見てきた中ではボクシングから一番遠いところにいたけど、一番努力して頑張ったんじゃないかな」とねぎらった。「人を殴ることに前向きになれなかった」という岸井も、「日々の練習の中で、これは自分自身との戦いなんだと分かる瞬間があった。縄跳びのボクサー跳びができるようなった瞬間とか、どんどんパンチが強くなっていく瞬間とか」と、練習の成果が表れることにのめり込んでいったと語った。

終盤にはモデルとなった小笠原さんも登壇。手話で「昔の自分を思い出して涙が出ました。日本の邦画は字幕がないのであまり見ることがないですが、初めて邦画を見て素晴らしいと感じた」と言葉をかけられると、岸井は「うれしいです」と目に涙を浮かべた。