先日、デビュー55周年を迎えている歌手和田アキ子(73)を取材した。

10月18日の東京・NHKホールを皮切りに「AKIKO WADA LAST HALL TOUR」をスタートさせる。これが、最後のホールツアーになるということで、スポーツ各紙の合同取材に応じた。

余談になるが、和田は長年、日刊スポーツの読者でもある。合同取材にもかかわらず「私は、長年、朝日新聞と日刊スポーツを購読しています。今は、ネット時代だといわれますが、私はやはり、新聞社が選んで紙面に載せるニュースを読みたいと思います」と新聞愛を語ってくれた。弊紙の愛読していただいていることに加え、新聞を愛していただいていることに感謝したい。

数字で55周年というと、1つの数字にしか過ぎない。でも、デビューした時に生まれた赤ちゃんが、社会人となり、一般的には役職定年となる55歳を迎えているのだと思うと、本当に長く歌い続けていると感嘆させられる。

インタビューは所属するホリプロ本社ビルで行われた。和田は「山口百恵や森昌子の活躍でビルが建ちましたけど、私も一部は貢献していると」謙虚に語る。55年にわたり、今も第一線で活躍している和田の貢献度はかなり高い。それだけに和田も「給料制のホリプロで、55年間もやってきたんですからね。世界的に見ても、同じ事務所でずっという人はあまりいないらしいですよ」。

歩合制ならば、仕事がなかったり、仕事を休んだりすると、事務所側はお金を支払う必要もない。だが、給料制だと、常に月給を支払うわけだからリスクも高い。そんなホリプロで、和田は55年も第一線で走り続ける。稼ぎ具合などと書くと、いやらしくなるが、そのあたりはさすがだなと思う。

和田には、主に2つの顔がある。長年のレギュラー番組でもある、TBS系「アッコにおまかせ」とニッポン放送「ゴッドアフタヌーン アッコのいいかげんに1000回」でもわかるようにタレント、MCとしての顔だ。その一方で、和田は歌手としての思いも強い。

今回も、「節目の30周年から35年、40年、45年、50年と節目のホールツアーの最後に歌ってきた『今あなたにうたいたい』を、オフマイクで歌いたい。歌手和田アキ子として、節目の55周年の締めくくりに歌いたいという自分の気持ちがある。バストやお尻が下がっても、真っ赤なマニキュアしてブルースを歌いたいというのが私の夢ですので。歌う気力は十分あるし、ボイトレも週に2回通ってますから」と語っていた。

30周年の記念コンサートでは敬愛するレイ・チャールズが和田のために来日し共演。40周年では米・ニューヨークの名門アポロ・シアターで開催。「私のファンの方は、ニューヨークまで来てくださいましたが、そういうファンのためにはもちろん、もしかしたら私が歌手だと知らない人のためにも、歌手和田アキ子を知らしめたいと思うんです」。やはり、歌手への思い入れが強いようだ。

タレントとして、和田がブレークしたのは、73年から出演した日本テレビ系「うわさのチャンネル!!」だろう。ゴッド姉ちゃんと呼ばれ、せんだみつお、ザ・デストロイヤーらとドタバタ劇を繰り広げた。当時の世帯視聴率は30%を超えるなどおばけ番組になったが、ドタバタコントの際、大声を出すことから、本業の歌手活動に影響をきたすことに。和田はマネジャーに相談して、番組を降板することになったが、その後、ホリプロと日本テレビが対立したことは業界的に有名な話だ。

和田によると、生放送の「うわさのチャンネル!!」は毎週金曜日、ドタバタコントで、絶叫するあまり、週末にブッキングされている公演で、声が出なくなってしまったのだという。

高視聴率番組を降りてでも、歌手活動を優先させた形だ。もう、数十年前の話にはなってしまうが、歌手和田アキ子としての矜恃(きょうじ)がわかる。【竹村章】