スタジオジブリ社長の鈴木敏夫プロデューサー(74)が28日、都内の寺田倉庫で行われた「金曜ロードショーとジブリ展」(29日~9月24日)開会セレモニー&プレス内覧会で、新作長編映画「君たちはどう生きるか」の公開を2週間後の7月14日に控えながら、宣伝を一切、しないことについて、宮崎駿監督から「宣伝なくて大丈夫かな? 鈴木さん、信じているけど。心配だな」と問われたと明かした。加えて、新作アニメ映画を作っていく方向性も示した。

「君たちはどう生きるか」は、13年の映画「風立ちぬ」以来、10年ぶりの宮崎監督の新作となる。鈴木プロデューサーは「今更、お前は何を言うんだ? と言われるかも知れないけれど、宣伝の中で作品の内容を伝えた。頭からケツまで伝えすぎることが視聴者の関心をそいでいる気がした」と語った。そして「いろいろ考えるうちに一切、宣伝がなかったら、どうなるんだろうと考えた。これだけ情報の時代に、情報がないことがエンターテインメントになる。うまくいくか分からないが信じてやる」と語った。

「金曜ロードショーとジブリ展」は、日本テレビ系の映画番組「金曜ロードショー」の歩みをたどりながら、スタジオジブリ作品の魅力を紹介する展覧会。同番組は、72年から放送されていた「水曜ロードショー」の放送日が金曜日に移ったのを機に名称を変更し、1985年(昭60)から放送されており、翌86年には、84年の「風の谷のナウシカ」(宮崎監督)を日本テレビの特別番組として初放送。それ以来、これまで200回以上にわたってスタジオジブリ作品を放映してきた。97年から09年までは、スタジオジブリが制作したオリジナルのムービー(音楽・久石譲氏)がオープニングを飾った。キャラクターの“フライデーおじさん”は、宮崎監督が生み出し「耳をすませば」を監督した近藤喜文氏が仕上げた。

「金曜ロードショーとジブリ展」では、スタジオジブリ作品が公開された年と「金曜ロードショー」で放送された年は、どんな時代だったのかをたどりながら、スタジオジブリ作品の魅力を紹介。昭和から平成、令和に至る世相を掘り起こすことで、スタジオジブリ作品が持つ時代性と普遍性を浮かび上がらせる。

また、スタジオジブリ作品のポスターの中に飛び込んで、主人公のように撮影できるフォトスポットが登場。日本テレビが初めて製作に参加した89年「魔女の宅急便」をはじめ、97年「もののけ姫」、02年「猫の恩返し」など、まるで架空のスタジオに迷い込んだような空間で、次々にいろんな作品の主人公になることができる。

鈴木プロデューサーは質疑応答の中で「(20年の)『アーヤと魔女』はあったが映画を10年、外に出していない。忘れられていないのは『金曜ロードショー』に寄るところが多い」と、日本テレビと「金曜ロードショー」に感謝した。そして「このタイトルで、イベントをやろうと言いだしたのは僕。存在は大きかった。若い人は、必ず『映画館で見ていない、テレビで見ているんですよ』と言われまくった。これがヒント」と展覧会のタイトルに関し、説明した。

さらに、スタジオジブリが新作アニメ映画の製作で、今後の方向性が一致していると説明。「映画は作り続けようと一致しています。次の映画は検討中。実写は一応、やったことはあるのですが、アニメーションが主。自分たちで作ることが大きいかな、と。こだわっています」と語った。さらに「君たちはどう生きるか」について「今回は手書きで作りました。『アーヤと魔女』はデジタル。手書きを基本に置きたい、というのはある」と手書きが原点であり、そこにこだわっていく考えも示した。