「Dr.スランプ」「ドラゴンボール」などの作品で世界的な人気を誇った、漫画家の鳥山明さん(とりやま・あきら=本名同じ)が急性硬膜下血腫で1日に急逝した。68歳だった。

作品を連載した「週刊少年ジャンプ」出版元の集英社と鳥山さんの事務所「バード・スタジオ」などが8日、発表した。葬儀は近親者のみで執り行った。漫画を文化にまで昇華させた巨匠の死に、世界各国から悲しみの声があふれた。

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フジテレビ系で、81年4月からアニメ「Dr.スランプ アラレちゃん」が放送された当時のことを、今でも鮮明に覚えている。少年漫画が原作ながら、周囲の女の子たちが毎週、アニメを固唾(かたず)をのんで見始め、キャラクターのゴム製フィギュアと名所をセットにした玩具「ペンギン村分譲中」やコミックスを買い集めた。女の子に、少年漫画という“ハードル”をヒョイと越えさせた変化を目の当たりにしたのは1つの新鮮な驚きだった。

アラレちゃん、ガッちゃんをはじめ、とにかくかわいらしいキャラクターが女の子の心をわしづかみにしていた。アラレの同級生あかねの実家が営む喫茶店「コーヒーポット」をはじめ、ペンギン村のカラフルな建物、街並みは格好良かった。人気ギャグ漫画のアニメ化作品は「Dr.スランプ」以前もあったが、ポップで明るい風合いは当時、すごく新しさを感じた。「キーン」と口にして走り回るアラレちゃんのまねをする子どもが続出し、代表的なセリフ「んちゃ」は子どもたちの間で自然とあいさつがわりになっていった。

記者になり、漫画やアニメを取材するようになって、鳥山さんが執筆を可能な限り1人で行うスタンスを貫くため、グラデーションなどを入れるスクリーントーンなども極力、使わないなど手順を簡潔にして、手書きを徹底していたと関係者から聞いた。シンプルなかわいらしさが子どもの心をつかみ、言葉も国境も越えて世界中の人の心に刺さったのだと心から思えた。【村上幸将】

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