フジテレビ系アニメ「ちびまる子ちゃん」(日曜午後6時)の主人公まる子(さくらももこ)を34年にわたって演じた、声優のTARAKO(タラコ)さんが4日未明に亡くなった。63歳だった。同局と制作の日本アニメーションが発表した。所属事務所によると、今年に入って闘病していたが容体が急変したという。葬儀は家族葬で執り行い、後日、お別れの会の開催を検討しているという。生前、最後に演じた出演回は24日に放送予定で、後任などは対応を検討している。

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日曜の夕方に「サザエさん」と並んで日本のお茶の間と家族を明るく照らした「ちびまる子ちゃん」の、ど真ん中に立ち続けたTARAKOさんが逝った。所属事務所は公式サイトで「今年に入り病と闘いながら仕事をしておりましたが、容体が急変して亡くなりました」と、急逝だったことを明らかにした。

TARAKOさんは、主宰する演劇集団WAKUプロデュースで昨年12月に都内で上演した公演「something どこにいても ここ」で作・演出に加え出演。X(旧ツイッター)には同公演や、1月のアニメアフレコ時の写真も投稿していたが、変わった様子は見られなかった。ところが2月4日にXに投稿したアフレコ時と思われる写真では、車いすのようなものに乗っていた。末尾に「みんな大好き『またね~』」とつづり、投稿は同26日のリポストを最後に途絶えた。アニメ制作スタッフも「最後まで病棟でも収録をしたいと意欲的で、大きな愛情をもって『ちびまる子ちゃん』に向き合ってくださいました。急な訃報に驚きを隠せません」とコメントした。

TARAKOさんは、シンガー・ソングライターとして芸能活動を始めた。事務所社長の勧めでオーディションを受け、81年のフジテレビ系アニメ「うる星やつら」で声優デビュー。翌82年には、テレビ朝日系ロボットアニメ「戦闘メカ ザブングル」に8歳の少女チル役で出演。自身初のレギュラー役をつかみ、若手ながら声優としてその名を知られる存在となった。

83年に初アルバム「とっておきの瞬間」でミュージシャンとしてもデビューし、その後5枚のアルバムを出すなど活動を続ける中、「ちびまる子ちゃん」のオーディションを受けて合格。原作者の漫画家さくらももこさんと声が似ていたことが、その後、34年にわたってまる子を演じる縁となった。

前日8日の漫画家・鳥山明さんに続く訃報に、日本の漫画、アニメ界に涙雨が降り注いだ。

○…16年5月にお姉ちゃん役の水谷優子さんが、18年11月にさくらももこさんが同じ乳がんで亡くなると、TARAKOさんは「私がそっちにいったら、似たような声でいっぱいいっぱいおしゃべりしてくださいね。そちらで楽しいこといっぱいいっぱいしてくださいね。優子ちゃんに会ったらよろしくです。ももこ先生は『ありがとう』しかない恩人です」と感謝していた。

また、さくらさんをしのぶ会では、弔辞にあたる「ありがとうの言葉」を「まる子」の声で紡いだ。はじめは自身の声だったが、途中で「この人が一番知っているんじゃないか」と切り出し「まる子」にチェンジ。「3年4組、まる子。大人になった私へ。よくぞ夢をかなえてくれました。あんた本当にエライよ、おめでとう」と語りかけ「大人になって天使になって天国へ行く私へ。そっちでもたまにまる子書いてよね」と呼びかけていた。

◆TARAKO(タラコ) 本名非公表。1960年(昭35)12月17日、東京・江戸川区生まれ、群馬・太田市出身。81年、アニメ「うる星やつら」で声優デビュー。90年「ちびまる子ちゃん」で主人公「まる子」役を担当。83年にアルバム「とっておきの瞬間」を発表。96年には演劇集団WAKUを設立し、主宰、舞台の作・演出・出演も手がけていた。

◆「ちびまる子ちゃん」 1986年(昭61)に連載がスタート。漫画家さくらももこさんの代表作で、さくらさん自身の少女時代をモデルに、静岡県で暮らす小学3年生のまる子とその家族、友人たちとの日々をユーモラスに描いた。アニメは90年1月~92年9月にかけて第1期が放送され、95年1月から現在に至るまで第2期がフジテレビ系日曜午後6時で放送中。77年9月26日以降に放送されたアニメ番組の中で、歴代最高視聴率39・9%を記録(90年10月28日放送分、ビデオリサーチ調べ)。主題歌「おどるポンポコリン」も大ヒット。初代ナレーションはキートン山田。21年4月から、きむらきょうやが担当。