落語家桂ざこば(76)の弟子、桂ひろば(45)桂ちょうば(45)桂そうば(45)が、それぞれ「二代目桂力造」「四代目桂米之助」「二代目桂惣兵衛」を継ぐことになり、大阪市の落語定席「動楽亭」で30日、襲名発表記者会見を開催した。
3人は25年3月19、20日にサンケイホールブリーゼで行われる「桂米朝没後10年」で、同時襲名披露する。米朝事務所所属の落語家の襲名は桂八十八以来。事務所の常務取締役も務める桂南光は「誰かが襲名した方が仕事が増える」と冗談めかしながら、人選の結果、やる気も十分ということで3人に白羽の矢が立ったことを明かした。
ひろばは、落語家として初めて「桂」を名乗った初代桂文治の弟子、桂力造を受け継いだ。襲名については「まさか自分が。そんな噺家(はなしか)じゃないと思っていた」。力造という名前はリストの中から自分で選択したという。
ひろばという名前を気に入っているものの、襲名は落語家にとって大きな転機。姓名判断もへて「イメージですね。力造っぽい。最終的には字画で選んだ」という。それだけに「初代力造の名前を汚さないように、ええ噺家になりたい」と力強く語った。
ちょうばは米団治の弟子が代々、受け継いできた「米之助」の名前を継いだ。先代の米之助は大阪市交通局に勤めながら落語を続け、上方落語の次世代への継承に大きな役割を果たし、後輩からも慕われた。一門でも大きな存在感があった。
ちょうばは先代の家族と10年ほど前から縁があり、定期的に墓参も。4、5年前から「ご縁のある方に継いでもらいたい」と声をかけてもらっていたが、「無理」と断っていた。
ただ、今回、同時襲名の話が浮上したことで、改めて自ら先代の家族にお願いし、快諾を得た。「身に余る大きな名前ですが、頑張っていきたい」。
先代の家族からは「あまり意識せずに、ちょうばさんなりの米之助を作っていって。名前が出てくれるだけでうれしい」と声をかけてもらったと言い、「基本的にはざこばの弟子。師匠のような人間の情を表現できる噺家に」と目標を掲げた。
そうばは、「桂」の原点・文治の本名、伊丹屋惣兵衛から名前をもらった。
「文や枝の名前を継ぐともめる(笑い)。それ以外から探したら、初代文治が伊丹屋惣兵衛。『そう』というのも入っている。精いっぱい頑張っていきたいのでよろしくお願いいたします」
江戸落語に続く当代文治を訪ねて、東京へあいさつに行き「いいですねぇ」とニコニコと返事があり、了解も取り付けた。
古典落語だけでなく、小説を落語にするなど活動してきたが、今後もこの路線を継続。「せっかく襲名興行も開いてもらえる。面白いと思っていただいたら、また来ていただきたい」と謙虚に語った。
トリプル襲名が決まり、師匠ざこばは、弟子が継ぐ名跡については「ノータッチだった」としながら「ありがたいこっちゃな」と喜び、「ひとつよろしくお願いいたします」と頭を下げた。
弟子のアピールポイントを聞かれると、「ひろばはバイクであちこちに行く。まあ、頑張って。ちょうばは…。なんかあったかな。うちに来ても、何でもやってくれる。いろいろありがとう。そうば…。マイペースやな。時間が来たら、『これで失礼します』。でも、寂しかったらいてくれる。ありがとう。ま、好きなようにしてえや」
“ざこば節”で評し、芸については「このままでええんとちゃいまっか。落語は自然に大きなっていく。本人次第や」とエールを送っていた。