第67回日本レコード大賞で企画賞を受賞した歌手の歌心りえ(52)が、このほど日刊スポーツの取材に応じ、喜びを語った。

4月にカバーアルバム「SONGS」をビクターから、「HEARTS」をエイベックスから発売し、歌手活動30年目でソロデビュー。2つのレコード会社から同時デビューは史上初だという。受賞の知らせは電話で聞いたものの「電話が来ることなんて全然なくて、何か嫌なことでも起こったのかな…と思った」と笑い、「ビクターとエイベックスが手を組んでやっていただけなかったらこういうこともなかった。本当に幸せです」と、喜びとともの両社への感謝を口にした。

昨年、「トロット(韓国の“懐メロ”)」のオーディション番組に挑戦したことをきっかけに、韓国の音楽番組「韓日歌王戦」「韓日トップテンショー」などに出演。歌唱力と表現力の高さで韓国中を魅了し、YouTubeで公開されたさだまさし「道化師のソネット」の歌唱動画は1000万回再生されるなど、大きな反響を呼んだ。

95年の活動開始当初はグループで活動し、その後はライブハウスなどで歌手活動を続けてきたが、30周年を迎えた今年、韓国での活躍をきっかけにソロデビューが実現した。エイベックスのディレクターが夫の同級生だった縁もあり、「『紅白を目指そう。歌心りえのCDをお店に並べよう』と言われた」とソロデビューを打診された。「それと同じタイミングでビクターからもお話があって、どちらか選ばないといけないの? 私はそんなことしたくない! と言ったら、両社で話し合ってくださって、両方で出していただいた」と、史上初の2レーベル同時デビューに至った。

アルバムでは韓国の歌番組で大きな反響を呼んだ「道化師のソネット」や中島美嘉「雪の華」など、名曲を多数カバーした。それでも自身の世界観で表現することにはかなり苦戦したという。「オリジナルの声が頭にしみこんでいるので、自分の世界に持って行く作業がすごく大変だった。オリジナルの世界観を取っ払うためにディレクターと話し合って、自分の中に主人公を描いて、演技するようなつもりで歌った」。さらに「私の感情を押しつけるのではなく、聴いてくださる人が余白を持って、皆さんが自分の気持ちを投影できるようにしました」と語った。

今年は昭和100年で、日韓国交正常化60年。自身も節目を迎えたタイミングでの受賞に「すばらしいタイミングで、何かのめぐりあわせですね」とほほ笑み、「やりたいことがあっても、自分で行動していかないとチャンスはつかめない。それを実感する1年でした」とかみしめた。「音楽はボーダーレスで、お互いの音楽をオープンに受け入れている関係性が今はある。韓国の番組で日本人が日本語で歌う流れが浸透しているのはすごくいいことだし、これからもっと深い交流ができるようになってほしい」と願いを込め、「また韓国でコンサートをして、生で歌声を届けられるようになりたい」と目標を語った。心を込めた歌声は、これからも国境を越えていく。【野見山拓樹】