第98回米アカデミー賞のメーキャップ・ヘアスタイリング賞でノミネートされた「国宝」の李相日監督(52)、ヘアメークの豊川京子氏、歌舞伎メークの日比野直美氏、歌舞伎床山の西松忠氏が27日、都内の日本外国特派員協会で会見を開いた。会見の中で、李監督は当初、映画業界においてヘアメークアーティストとして屈指の評価を誇る豊川氏に託そうと考えたが、同氏から歌舞伎俳優が自ら行うメークを行うのは難しいと指摘され、クランクイン1週間前に日比野氏を含めチームを結成したと明かした。
李監督は「映画俳優を歌舞伎役者として作り上げる、最も重要な要素がメーキャップ。歌舞伎と50年という人生の時間を再現しないといけない。50年の半分、25年、仕事している京子さんにお願いすることにしました」と豊川氏に依頼した経緯を語った。一方で「歌舞伎のメーキャップは、歌舞伎俳優ご自身がやるものですから、他の方がする難しさ」と、そもそも歌舞伎俳優が自分でメークするものを、メークするところに壁はあったと明かした。
その上で「スタートは、京子さんのチームに歌舞伎のメークを習得してからクランクインするプランもあったんですけど(歌舞伎俳優の)中村京蔵さんに伝授していただこうと思ったら、見込みが甘かった。恭子さんは最初からダメだと思っていた」と振り返った。その上で「急きょ、スペシャリストが必要となった」と、映画に精通する豊川氏から難しいという方向性が示され、専門家を入れる方向にかじを切ったと明かした。
豊川氏は「最初は歌舞伎のメークも全部やれと言われたけれど…別物だと思ったので。練習するうちに、役者に失礼だと思いました。にわか仕込みの我々がやるべきことではない。いろいろな方に相談する中で、思いが伝わらず…プロデューサーからひと言、顔師を入れないといけないと言っていただいた」と振り返った。
李監督は「見つかるのかと思って、見つかったのが日比野さんだった。宝が見つかったと喜んで、クランクイン1週間前に合流してもらいました。西松さんは、歌舞伎の桂を40年以上、やられているので技術と長い経験が、この作品のリアリティーを担保することに必要だったので、1から作ることで参加いただき、このチームができた」と笑みを浮かべた。豊川氏は「映画の中で50年を描かないと行けない。そこに集中することができました」と、本業に専念できたと感謝。その上で、米アカデミー賞ノミネートについて聞かれ「本当に、ノミネートいただけたんだと。実感がなかった。伝統の歌舞伎が題材ということもあり、白塗りメークも、かつらも素晴らしかった。私は何をやったんだろう? チームの統括として現場にいたんですけど、そっちの気持ちが大きくなった。たまには、こういうのも良いよねと思った」と言い、笑った。
「国宝」は作家・吉田修一氏(57)の同名小説の映画化作品。吉沢亮(32)が主人公・立花喜久雄の50年の人生を、少年期を演じた黒川想矢(16)と演じた。抗争で父を亡くした喜久雄を引き取る上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎を渡辺謙(66)半二郎の実の息子で、生まれながらに将来を約束された御曹司・大垣俊介を横浜流星(29)と、少年期を越山敬達(16)が演じた。吉沢と横浜が、歌舞伎俳優の中村鴈治郎(66)から1年半にわたって歌舞伎の指導を受けたことも話題を呼んだ。
25年6月6日の初日から同11月24日までの公開172日間で、興行収入(興収)173億7739万4500円、動員1231万1553人を記録。03年「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(本広克行監督)が22年、守った173億5000万円の実写日本映画興収記録を22年ぶりに更新。今年2月15日までの公開255日間で、興収200億851万9000円。動員1425万2409人を記録。邦画実写史上初の興収200億円を突破した。また歴代ランキングでは、196億円を記録した04年「ハウルの動く城」を超え、203億円を記録した01年「ハリー・ポッターと賢者の石」に次ぐ10位に躍り出た。
メーキャップ・ヘアスタイリング賞は、これまで米国籍を取得したカズ・ヒロ(辻一弘)氏が18、20年と2度、受賞しているが、日本映画としては初めて。受賞すれば、日本国籍を持つ日本人では初となる。授賞式は3月15日に開催される。



