歌手成世昌平(75)が新曲「母ちゃんの海/デカンショ初盆」をリリースした。デビュー40周年を超えて、民謡歌手として培った歌唱力を基に演歌歌手としての歩みを重ねてきた。成世に聞いた。【取材・構成=小谷野俊哉】
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「母ちゃんの海」の作詞は浜圭介氏と原文彦氏、作曲が浜氏。成世にとって、今まで歌ってきた曲とは一線を画す曲になった。
「最初に曲を聴いた時、これは浜先生そのものの世界だと思いました。先生からは『成世昌平だと分からなくてもいい。いい歌だと思ってもらえればいい』と言われたんです」
浜氏の曲を歌うのは2010年(平22)の「春よとまれ」以来、16年ぶり。今回は浜氏自身がレコーディング前に2度にわたってレッスンを行い、自ら歌って手本を示しながら、ひとつひとつ表現を作り上げていった。
「最近はレコーディング前にレッスンを受けることなんてほとんどありません。でも今回は違いました。『僕が思うように歌ってほしい』という先生の熱意が伝わってきました。キー設定も普段より低く、リズムの取り方もこれまでのスタイルとは違いました。声を張り上げて歌うのではなく『この音域、このリズムで歌え』と言われました。最初は本当に苦労しました」
浜氏の熱い思いをかみしめて、丁寧に歌い込んでいった。
「浜先生から『40周年だからといって集大成ではなく、もう一度ゼロから新しい歌を歌ってほしい』という思いを伝えられました。今までの成世昌平らしい歌ではなく、『へえ、こんな歌も歌うんだ』と思ってもらえる作品にしたかったんでしょうね。その期待に応えたい一心でした」
「母ちゃんの海」は、日本海やオホーツク海を舞台に、たくましく生きる母の姿を描く作品。父に代わって漁に出る母の姿を、抑えた声で歌っている。歌詞の中には、主人公の姿は具体的には描かれていない。
「だから自分の中で情景を想像しながら歌うしかありませんでした。でも一番大事なのは『生きていくんだ』というメッセージ。今の時代だからこそ、この言葉をしっかり届けたいと思いました。カップリング曲の『デカンショ初盆』(作詩・原文彦、作曲・浜圭介)は、民謡でも親しんできた『デカンショ節』を土台にした作品。自分で、この曲を選びました。伸び伸びと歌っています(笑い)」
デビュー40周年企画の「成世昌平作品カラオケコンテスト」を今年いっぱい、ダブル開催している。「母ちゃんの海/デカンショ初盆」のCD購入者を対象に2コース。「母ちゃんの海」コースは新曲のどちらか、「成世昌平作品」コースは過去40年で成世が発売した曲を歌ったものを録音して応募。来年4月に各コース10人の入賞者で大阪で決勝大会を開催。各コースのグランプリは、成世と一緒の北海道オホーツクの旅(2泊3日)にペアで招待される。
「昔から、僕の歌はカラオケで本当にたくさん歌っていただきました。その中には全国大会で優勝するような方も大勢います。今回は、その皆さんの中の“日本一”を決める大会になればいいですね」
今年4月には鼠径(そけい)ヘルニアの手術を受け、3人目の孫が誕生した。初めての男の子の孫だ。
「今年はいろいろな出来事が重なりました。手術も乗り越えて、孫も生まれて、本当にいい一年だなと思っています。この運気を続けていきたいですね。健康法は“歌うことが一番”です。民謡の指導を続けながら、歌い続ける毎日は最高ですね。民謡では『名人位』もいただきましたから、人前で歌う以上は『やっぱり成世昌平は違う』と言っていただける歌を届けたいと思っています。落ちたなと言われるのだけは嫌なんです」
まだまだ、思い描く夢がある。02年に「はぐれコキリコ」の大ヒットでNHK「紅白歌合戦」出場内定の報を受けて、大阪駅から会見の開かれる東京駅行きの新幹線に乗り込んだ。だが、まさかの落選の報で京都駅で下車した。
「『母ちゃんの海』をヒットさせたい。そして、もう一度夢を持ちたい。『紅白歌合戦』も、すぐじゃなくてもいい。加山雄三さんの85歳の最高齢出場を目指すくらいの気持ちで、これからも歌い続けたいと思っています」
40周年はゴールではなく、新たなスタート。成世昌平は、再び大きな海へこぎ出そうとしている。
◆成世昌平(なるせ・しょうへい)1951年(昭26)6月10日、広島・三次市生まれ。70年に島津製作所入社。74年に民謡を始め、77、78年に「産経民謡大賞」青年の部優勝。78年に退社してプロ民謡歌手に。85年に「博多節/福知山音頭」でCDデビュー。02年(平14)「はぐれコキリコ」がロングセラー50万枚超えの大ヒット。血液型O。



