元宝塚歌劇団雪組トップで女優の望海風斗が先日、大阪府の梅花女子大で、文化表現学部舞台芸術表現学科開設記念スペシャルイベントに登壇した。
「初めてに近い」というトークイベントへの出演。宝塚時代について、「どんな男役か説明するのも難しいので、まず一発歌っちゃいます!」と言い、いきなりミュージカル「エリザベート」の楽曲「最後のダンス」を披露。「宝塚随一」と名をはせた圧倒的な歌声で初っぱなから聴衆の度肝を抜いた。
同学科で教授を務める元宝塚歌劇団スターで、演出家の謝珠栄氏らとクロストーク&学生からの質疑応答にも参加。その内容が興味深かった。
司会を務めた脚本・演出家の岡部尚子氏から「やっておいて良かったこと」を聞かれた際、謝氏は「宝塚って12科目あったんですよ。全部実技。それが役に立った。でたらめですけど(退団後に)いろんな劇団に行ったときに日本舞踊も太鼓のたたき方も教えられた。指導者の立場になったときにすごく役に立った」。
その経験を踏まえ、同大では役者希望だけでなく、裏方を希望する学生にもセリフや歌、ダンスなどいろんなことをやらせているといい、「照明や音響の人もバレエとかやればいい。この前、宝塚の『RRR』を見に行ったら、フライングのシーンがあって、それ(装置を使って主役をつり上げる)を生徒がやってるの。すごく上手。(主役が)『ここで飛びたい』と思ったときの気持ちを分かってくれるのは(つり上げる側の生徒も)役者をやっているから。何でも経験した方がいいのよ」と持論を繰り広げた。
望海も「最初の一歩を踏み出すのって結構怖いですけど、若いうちにやっておくと後で役に立つ。私も三味線のお稽古があって、好きだけど使わないだろうなと思っていたら、のちに映像のお仕事で弾く機会がありまして。『代わりに弾く人がいるから持つだけでいい』とは言われたんですけど、稽古したら『三味線やったことあるね』って言われました。持ったことがあるだけでも、やったことのある人には分かる。やってて良かったって思いました」と同意。NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」などで役に生かせたといい、多くの作品を見たり、知らない土地に行ってみることも、のちの作品づくりで役に立つことがあるという。
演出家との作品のやりとりでも、海外の演出家は意見を求めてくることが多いといい、「相手にとっては変な質問なのかもしれないけど、自分の感じたことは言ってみた方がいい。そこから生まれるものもある」と語った。
こうした話は何も演劇の世界に限ったものではなく、一般社会でも共通するところがある。未経験だからこそ生まれる意外性などもあるだろうが、1度でも経験があるとないとでは対応の差に余裕や違いが生まれる。
謝氏は「力がつきますよね。女優さんには頭からメイクから全部してもらわないとできないって人もいるけど、宝塚は自分でやるから」とも話した。実力勝負の世界にあって、本人の資質、努力が大前提になるのは間違いないが、こうした経験値の多さ、引き出しの広さが多くの宝塚OGが退団後も活躍する背景のひとつになっているのだろう。
望海は「マスタークラス」「エリザベート」の演技が評価され、第33回読売演劇大賞で最優秀女優賞とグランプリである大賞を受賞するなど活躍を続けている。現在はミュージカル「ファニー・ガール」に出演中。その演技、歌声を楽しんでほしい。【阪口孝志】



