<連載「気になリスト」(79)>

 劇作家で俳優の唐十郎(73)の次男大鶴佐助(19)が、父の作品「盲導犬」(7月6~28日、東京・渋谷シアターコクーン)で舞台デビューする。不服従の犬ファキイルをめぐる物語で、せりふもコミカルかつ美しく詩情にあふれている。演出は蜷川幸雄氏で、古田新太、宮沢りえ、小出恵介らが出演。研修生役で抜てきされ、決意を語った。

 「好きな戯曲だったので、出演が決まった時はうれしかった。僕にとっては挑戦だと思う。けいこ場で蜷川さんの演出は見たことがあるけれど、怒鳴られることは覚悟しています」

 12歳で父の映画に出演したが、俳優を志したのは高校2年だった。「進路を決める時、小さいころから見ていた舞台、映画の世界に入りたいと思いました。父に相談したら、賛成してくれて『自分にしかできない生き方をしなさい』と言われました」。

 現在は姉の大鶴美仁音(21)と同じ日大芸術学部演劇科の1年生。真木よう子も所属する芸能事務所に入り、映画「桐島、部活やめるってよ」「スープ」などに出演した。実は劇作も手がけている。「小学生のころ、父から『沖縄で見た魚たちを主人公にした話を書け』と言われ、原稿用紙で14~15枚書いたことがあります。小学生の時は強制的に書かされていました。今、短編戯曲が2つ完成しています」。

 親子2代の付き合いとなる蜷川氏は「どういう感性で、お父さんの作品で芝居をしてくれるのか楽しみ。初々しくて、伸び伸びしているので、唐さんの作品に新風を吹き込んでほしい。ナイーブな感じがしますが、唐さんの息子さんなので、単なるナイーブでないはず!

 と思っています」と期待している。

 将来は父と同じく、劇団を持ってテント公演をしたいという。「父の作品をやっていきたい。テント公演は内と外と違う世界を隔てているのはビニールシート1枚というところにワクワクします。役者として父は好きだけど、父にはなれない。演出もしたいし、自分にしかできないことをやっていきたいです」。【林尚之】

 ◆大鶴佐助(おおつる・さすけ)1993年(平5)11月14日、東京生まれ。12歳で映画「ガラスの使徒」でデビュー。07年にはNHKドキュメンタリー「わたしが子供だったころ」で唐の幼少時代を演じた。日大芸術学部1年に在学中。174センチ。特技は金管楽器の一つユーフォニアム、趣味はブラジルの腿法であるカポエイラ、ダイビング。(3月21日付

 紙面から)