男鹿線「新型交流蓄電池電車「EV-E801系」、なまはげがヘッドマーク
男鹿線「新型交流蓄電池電車「EV-E801系」、なまはげがヘッドマーク

 新幹線「こまち」で秋田、男鹿半島へ向かっている。

 「こまち」と言えば「小野小町」(その系譜は不明であるが)である。クレオパトラ、楊貴妃に連なる「世界三大美女」-紀貫之が選んだ六歌仙や、藤原公任が選んだ三十六歌仙のひとりにも数えられ、優れた歌人でもあった。才色兼備、であろう。

「花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに」

 古今集にある。その大意は「春の長雨に、桜が虚しく色あせていくように、愛や世間に悩んでいたら、美貌もまた衰えあせてしまった」といったところか。

 以上、季節は「春」である。

「秋田名物八森ハタハタ、男鹿で男鹿ブリコ(アーソレソレ)能代春慶、桧山納豆、大館曲げわっぱ」

 秋田音頭である。

 いまさらだが、ブリコは秋田名物の魚「ハタハタ」の卵。厳寒の日本海、2ミリほどの卵が互いにくっついて塊になり海藻に付着、それが強風・波浪で海岸などに打ち上げられる。ハタハタ(鰰)は別名カミナリウオ(雷魚)、漁期の冬によく雷が鳴るところから、こう呼ばれる。

 以上、季節は「冬」である。

 付け加えるなら秋田音頭に、「コラ秋田の国では 雨が降っても唐傘などいらぬ 手頃な蕗の葉 さらりとさしかけ サッサと出て行くかえ」-秋田の大フキは食べるだけでなく、日よけ、雨よけ、水飲み容器、収穫した山菜やイワナ、キノコを包んだり、イワナの蒸し焼きにも使える。さらに渓流ならどこにでも生え、大変重宝する植物だという。

 旧藩時代に秋田藩主佐竹氏が江戸城で諸大名に大フキの自慢話を持ち出し、本物を国元から取り寄せて面目をほどこしたという御国自慢のひとつになっている。

 巨大なそれ、見ごろは6月。「初夏」であろうか。

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 で、今回は夏の終わり「秋」を目指す男鹿半島行である。はたして“季節外れ”のこの時期、見ものはあるのだろうか。

 お目当ては「男鹿半島遊覧船めぐり」、半島の景観である。男鹿水族館近くから乗船、西海岸遊覧船コースで海岸線を望む。この西海岸、「おが潮風街道」はドライブコースとして人気の高い、風景美に富んだスポットでもある。ところが台風15号の余波を受け船は欠航、バスによる周遊となった。

 宮島、鎧嶋(よろいじま)、かもめ島、巨大岩脈、鷹ノ巣断崖、さらに進めば立岩、白糸の滝、大桟橋、孔雀の窟(いわや)。あの有名なゴジラ岩-潮瀬崎と呼ばれる岩礁地帯に構え、その姿は海に向かってほえているかのよう【画像】。夕陽に照らされた時間帯が狙い目だが、さらにはゴジラのしっぽ岩、ガメラ岩などユニークな岩礁に魅了される。

天候が良ければ夕刻、ゴジラ岩が見られる(JR東日本秋田支社提供)
天候が良ければ夕刻、ゴジラ岩が見られる(JR東日本秋田支社提供)

 車窓からみる海岸線から「男鹿半島ジオパーク」を堪能した。

 本来船で到達するはずであった「赤神神社 五社堂」もバスで訪ねる。鬼が築き上げたという999段の石段を登るとお堂が見えてくる。祀られているのは5匹のなまはげで、両親と子供3人だといわれる。そばには、覗いたものの余命をあらわすとされる「姿身の井戸」や「御手洗の池」。摩訶不思議な世界へ導かれそうな趣でもある。

秋田県男鹿市は、疲れた身体を癒す温泉や水量豊かな湧水群、「男鹿のナマハゲ」に代表される歴史や文化、自然、動植物に加え、大地の豊富な恵みが育む食文化とそれらを担う人々の生活など、「大地と人の物語」に恵まれている(HP「男鹿半島・大潟ジオパーク-日本ジオパーク」)。

そんな一端に触れる旅。秋田は「秋」もまた、絶品なのである。

■詳細はHP「東日本旅客鉄道株式会社 秋田支社公式サイト」、「なまはげの里 秋田県男鹿市公認観光情報サイト・男鹿なび」で検索。観光情報を網羅している。

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■「なまはげ」ヘッドマークの新型交流蓄電池電車「EV-E801系」 秋田駅~男鹿駅を結ぶ男鹿線。車両に大容量の蓄電池を搭載、その電力を利用して非電化区間も走れる。従来のディーゼルカーによる排気ガスが解消、二酸化炭素や騒音の削減が実現する。

潮の香り漂う「男鹿しょっつる焼きそば」
潮の香り漂う「男鹿しょっつる焼きそば」

■男鹿しょっつる焼きそば 男鹿に足を運んでもらえる「食」を創ろうと、地元食文化「ハタハタしょっつる」を気軽に楽しんでもらえる「焼きそば」として開発したご当地グルメ。タレは日本三大魚醤の一つ秋田名物しょっつるベースの塩味としょうゆ味。麺は粉末ワカメと昆布ダシ入りの特製麺。具材に肉を使わない海鮮焼きそばで、タレと麺以外は各店オリジナルレシピだ。まずお試しを。

■なまはげ館 男鹿60の地区に及ぶ多種多様なナマハゲの面・衣装の実物を展示する圧巻の「なまはげ勢揃いコーナー」、ナマハゲの里である男鹿の自然や風習、ナマハゲに関する資料を展示する「神秘のホール」、大晦日のナマハゲ行事を紹介する映画を大スクリーンで上映する「伝承ホール」、本物のナマハゲ衣装を身につけることができる「なまはげ変身コーナー」などがあり、多彩なナマハゲ情報を発信する(男鹿市北浦真山字水喰沢、電話0185・22・5050)。

■男鹿水族館GAO 映画「釣りバカ日誌」のロケ現場として利用された人気スポット。アシカ、ペンギン等の人気の生き物や川の生き物をはじめ、巨大水槽、男鹿の海を再現した水中トンネルなど見所が満載。戸賀湾・入道崎、門前・大桟橋・桜島など、他の観光スポットへのアクセスも便利。(男鹿市戸賀塩浜、0185・32・2221)

■小玉酒造 小玉醸造株式会社(潟上市飯田川飯塚字飯塚34の1)は明治12年創業の秋田を代表する味噌・醤油・酒の蔵元。「 ヤマキウ」ブランドの味噌・醤油。なかでもヤマキウ秋田味噌は、県内一の生産量。おなじみ「太平山」ブランドの酒は全国酒類品評会で第1位を獲得。モンドセレクション金賞受賞。酒蔵見学可(電話018・877・2100)。

★フォトギャラリーブルーホール(小玉酒造内、電話018・877・5772)は、酒蔵をリノベーション。大正時代に建てられた煉瓦造りの酒蔵の中は、秋田杉の香りがほのかに漂い、深海を彷彿とさせる静かなスペースだ。主に、郷土出身の写真家・中村征夫の写真展と、招待作家による展覧会を展開している。

【文化社会部編集委員・石井秀一】(ニッカンスポーツ・コム/コラム「新聞に載らない内緒話」 (2017年9月)