旧民主党のゆるキャラ「民主くん」(2017年3月22日撮影)
旧民主党のゆるキャラ「民主くん」(2017年3月22日撮影)

立憲民主党(立民)と国民民主党(国民)が、夏の参院選比例代表で使う党の略称を、ともに「民主党」として使うことになり、ちょっとした騒動になっている。もともと、2016年3月まで存在し、2009年9月から3年あまりは自民公明両党に代わって政権を担った政党の名称。愛着がある有権者もまだ、多いかもしれない。というのも、昨年の衆院選でも両党が略称を「民主党」としたため、比例で「民主党」と書かれた票が362万6320票も出て、それが大きなニュースになった。

普段は立憲民主党は「立憲」「立民」、国民民主党は「国民」などと呼ばれている。前回の2019年参院選では当時の立民は「りっけん」、国民は「民主党」だったが、昨年の衆院選はともに、親しまれた名称の「民主党」に。なんだかややこしい。衆院選で出た362万票あまりの「民主党」票は、得票の割合に従って振り分けられる「案分」の措置が取られ、立民には約295万票、国民には約66万票となったが、しょせん、案分の作業は機械的なもの。有権者の意思が100%反映されたものかどうかは、分からない。特に、想定外の14議席減で100議席を割り込んだ立民からは当時、「恨み節」のような声も聞かれた。

立憲民主党の泉代表(2022年1月28日撮影)
立憲民主党の泉代表(2022年1月28日撮影)

今夏の参院選では同じようなことがないように調整が行われたというが、結局、今回もまた立民、国民ともに「民主党」の略称を使う対応に。取材すると、立民の中には、かつての民主党の「本流」としての意識が強い側面もあって、国民には「譲れない」というような思いもあったようだ。

立憲民主党の党名は、2017年衆院選を前に、野党の合流をめぐり小池百合子東京都知事に「排除」されたリベラル勢力の結集へ、党を1から立ち上げた初代代表の枝野幸男氏がつけた思い入れのある名前。一方の国民は、「国民が主役の改革中道政党」をうたう。それでもなお、「民主党」が登場する。やっぱりややこしい。

立民は、今の形態になる前の2020年9月、1度解党し、現在は「合流新党」としての立民だ。合流新党発足の際に、代表選とともに所属議員による党名の投票も行われたが、「立憲民主党」を推した枝野氏に対し、「民主党」を主張したのが、今の立民代表の泉健太氏。当時は枝野氏が代表に選ばれ党名も「立憲民主党」が継続しているが、枝野氏が代表を去り、泉氏の代になっても民主党の上の2文字が浸透しているとはいえない。それは国民民主党も同じかもしれない。今の党名は、誰もが知るものとして定着していないことを、認めてしまっているようにも感じる。

国民民主党の玉木雄一郎代表(2022年1月20日撮影)
国民民主党の玉木雄一郎代表(2022年1月20日撮影)

思えば「民主党」という名称は自民党(自由民主党)の下の名称でもある、ポピュラーな名前。「自由があるのが自由民主党。自由がないのが民主党」などとやゆされたこともあるが、さまざまな党名ができては消えての流れの中でもがく中で、捨て去れずに残ったのが「民主党」の名前。安倍晋三元首相に「悪夢」などといわれながらも、離れがたい存在なのが「民主党」の名前なのだ。

今もって民主党の名前にすがらないと票をかき集められないという思いが、もしあるのだとしたら、正々堂々、「民主党」に戻した方がいいのではないかとさえ思ってしまう。

民主党といえば、思い出すのが、非公式扱いから公式に昇格した党のゆるキャラ「民主くん」。折からのゆるキャラブームにも乗り、政党=ゆるキャラの意外性も加わり、話題づくりに一役買った。民主党がなくなり民進党になった後には、「引退式」まで開かれ、当時の岡田克也代表と担当記者が民主くんを囲んで記念撮影したこともある。役目を終えた民主くんは、その後、憲政記念館に展示されたが、「民主党」がゆるキャラができるくらいの党名だったことは確かだ。

当時、必死に党のPR活動を頑張った民主くん。自分の名前をめぐり、現役引退後になって「取り合い」のような状況が起きているのを、どう見ているのだろうか。民主くんが泣いているゾ。そんな気がしてならない。【中山知子】