希望の党の小池百合子代表(東京都知事)は5日、民進党の前原誠司代表から衆院選への出馬を直談判されたが、固辞した。首相候補=党の顔を擁して戦う政権選択選挙だとしながら、参戦の可能性を否定する小池氏。ただ、かつて水と油の関係だった自民&社民が自社さ連立政権で組んだケースを思わせぶりに持ち出し、衆院選後の「政権の枠組み再編」に言及。誤算続きでも政権奪取の野望は、消えていない。勝負師・百合子の起死回生の一手を、永田町はなお警戒する。
「ラブコールもいただいたが、最初から出馬は考えていないと、再三お伝えしている」。5日昼、都庁近くのホテルで、エスニック料理を食べながら前原氏の出馬要請を受けた小池氏。会談後の会見で、出馬要請を断ったことを明かした。
「国政を変えたい小池さんが、新党をつくった。政権交代を目指すのなら出られる方がいい」。そんな前原氏の願いを小池氏は受け入れず、2人は小池氏以外の「首相候補」を早急に決めることで一致。衆院選後に前原氏が共同代表として首相候補となる案もあるが、前原氏は断ったという。
前原氏は、「ご本人の中では(出ないと)決着していると思う」と述べる一方で、「私は小池さんがいいと思う」と、まだ未練たっぷり。両者は今日6日に再会談し、前原氏は引き続き小池氏に出馬を求める。
小池氏が単なる応援にとどまらず、候補者となって戦いの最前線に立つかどうかは、選挙情勢や党勢拡大を左右する。希望内には、小池氏の出馬を求める声が依然強い。「公示前日の9日に電撃表明するのでは」という期待も消えない。
「しっかり戦い抜き、安倍政権と対峙(たいじ)する」。安倍晋三首相への対決姿勢を示す小池氏が、旧知の自民党・石破茂元幹事長に連携を呼び掛けたとの情報も、永田町に流れた。与党議員の切り崩しに入っているとの見方もある。
小池氏は衆院選を「政権選択の選挙だ」と位置づけ、政権奪取を狙う姿勢を隠さない。ただ、先月末、希望の党に合流予定だった民進党のリベラル系議員に対する「排除」発言で、小池氏批判は拡大。この日は、草創期から自身を支えた「都民ファーストの会」の都議2人が、小池氏の強権手法を批判して離党。大きなイメージダウンで、有権者の待望論も想定より広がらず、誤算が続いている。
出馬なら就任約1年で都政を投げ出す。出直し都知事選には多くの税金が投入される。不出馬なら党代表として無責任批判が起き、今後は都政でも国政でも厳しい立場となる。八方ふさがりの小池氏だが、取材には、かつて自民党が首相指名でとった「禁じ手」に言及。「(旧社会党の)村山富市委員長を担ぎ、水と油が結ばれた。いろんなことがある」「首相指名は選挙の結果を見てから」。追い詰められても、発言は思わせぶりだ。【中山知子】