安倍政権肝いりの働き方改革関連法案に盛り込まれる「裁量労働制」をめぐり、安倍晋三首相が答弁を撤回する原因となった調査データについて、厚生労働省は15日の衆院予算委員会で、首相答弁の「唯一の根拠」だったことを明かした。

 このデータは、「13年度労働時間等総合実態調査結果」に記され、裁量労働制が労働時間の縮減効果があるとした、首相答弁のもとになった。しかし野党側の調査で、この数字を出す際の厚労省による計算方法が、ずさんだったことが判明。厚労省の担当者は予算委で、首相答弁の根拠について「他にデータを持ち合わせていない」と明言したため、野党は「こんなものを根拠に、裁量労働制を入れようとするのはごまかしでしかない」「フェイクデータだ」と、批判した。

 厚労省は、野党が求めた精査結果の説明には応じず、加藤勝信厚労相は、19日に国会に提示すると述べた。今回の問題は「めったに謝罪しない首相が謝罪したのは、よほど無理があったことの証拠だ」(民進党の大塚耕平代表)と受け止められている。野党は「『もり・かけ』の構図に似ている」と、役所側の忖度(そんたく)の可能性を指摘している。【中山知子】

 ◆裁量労働制 実際に働いた時間にかかわらず、事前に決めた分だけ働いたとみなす仕組み。政府は、働き方関連法案に対象業務の拡大を盛り込む方針で、首相も働く時間の縮減効果を強調。しかし野党は働き過ぎにつながると反対の立場で、与野党が対立している。