人口1034人の村から五輪金メダリストが出た! 21日の平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)スピードスケート女子団体追い抜きに4人組で出場し、金メダルを獲得した菊池彩花(30=富士急)は、長野県南相木(みなみあいき)村生まれ。消滅の可能性を指摘される村に朗報を届けた。地元の温泉施設はメダル獲得を祝い、22日は入浴無料。活躍を願って考案した「菊池姉妹定食」がメダルを引き寄せた?

 菊池の金メダル獲得から一夜明けた22日、南相木村の日帰り温泉施設「滝見の湯」は、超満員の大盛況となった。村出身の菊池姉妹を応援するため、姉妹がメダルを取った翌日には入浴無料と掲げていた。普段の平日なら入浴客は40~50人だが、この日は倍の100人以上が集まり、村出身者では初めての五輪金メダルを喜び合った。

 同施設では姉妹を応援するために、応援メニュー「オリンピックゆきます姉妹定食」(1110円)を期間限定で提供中。団体追い抜きで金メダルに輝いた次女の彩花と、ショートトラックの三女悠希(27)五女純礼(22)たちが幼いころ、スケートを覚えた村の湖「立岩湖(たていわこ)」にすむ魚「シナノユキマス」の唐揚げがメインだ。

 標高1000メートルを超す村では1~2月には平均気温が零度以下になり、最低気温は氷点下15度を下回り、湖が結氷する。姉妹は物心つく前からこの湖の氷に乗り、スケートの練習をしていた。姉妹に縁が深い魚を目玉にした定食は、毎日品切れが続き、仕入れが間に合わない人気ぶりだ。この日は20食を用意したが営業開始7分で売り切れた。

 村では高齢化が進み、ソチ五輪が開催された14年の1月に1114人だった人口は、先月で1034人。就農できる環境や豊かな自然をPRし、Iターンの移住者支援に取り組むが、減少傾向は続く。村関係者は「菊池姉妹の頑張りと活躍で、村のことを知り、興味を持ってくれる人がいればうれしい」と話した。

 前日21日のレースは、村の公民館に80人が集まり、応援に声をからした。寒さは厳しいが、人と人のつながりを大切にする村だからこそ、地元で育った姉妹の大活躍に喜びもひとしおだ。村役場では「姉妹3人ともお祝いしたいが、こんな小さな村から金メダリストが出るなんて、そうそうあることではない」と、一夜明けても感動がさめやらない。金メダルの彩花を「名誉村民」とするなど、村では姉妹の五輪出場を祝う方法を検討している。

 ◆菊池彩花(きくち・あやか)1987年(昭62)6月28日、長野県南相木村村生まれ。佐久長聖高卒。5人姉妹の次女で、妹3人はショートトラック選手。四女萌水(もえみ=25)は代表を逃したが、三女悠希(ゆうき=27)、五女純礼(すみれ=22)と3人が平昌五輪出場を果たした。彩花はソチに続き、2度目の五輪で、ソチでは1500メートル31位。平昌は1500メートルメートル16位、3000メートル19位。170センチ、61キロ。