森友学園文書改ざん問題の渦中にある、安倍晋三首相夫人の昭恵氏(55)は17日、愛知県東海市で行われた福祉をテーマにした対談会に参加した。問題発覚後、一般人が参加するイベントには初登場。森友問題に触れることはなかった。難病を抱える男性らとの約45分間の対談は、穏やかな雰囲気で進んだ。一方、会場の外には昭恵氏の証人喚問を求め、声を上げる人もいた。

 昭恵氏は、約700人の観客に大きな拍手で迎えられた。対談中は、緊張や不安の表情は見せず。自身を「農家のおばちゃん」と例えて、観客の笑いを誘う余裕もあった。森友学園の国有地売却を巡る問題に直接言及することはなかったが「私も過去を後悔したり、反省したりするが、後悔したり、先に起こることを心配したり、恐れたりするのではなく、日々の瞬間を大切にしたい」と述べた。

 イベント自体はトラブルなく終了。ただ、会場の外には昭恵氏に説明を求める人たちの姿があった。15日には、昭恵氏宛てに脅迫文が届いたこともあってか、地元警察ら10人以上が出口付近を囲んだ。

 沖縄県から訪れた自営業の男性(26)は、車で会場を出る昭恵氏に向かって「安倍昭恵! 証人喚問に出ろ!」と2回叫んだ。「自殺者も出ている。これだけの問題で、当事者が話さないのはおかしい」。名古屋市の主婦(67)は「イベントに出る前に、もっとやるべきことがある。早く国会に出て、きちんと話してほしい」と訴えた。

 イベントの運営に関わった市役所の男性によると、昭恵氏の出席は「今日(17日)実際に来るまで分からなかった」。主催者側は、対談相手の代役も準備していたという。それでも昭恵氏は、自身の希望でイベントの最後まで会場最前列で観賞。終了後には、歌声を披露した地元児童合唱団の子どもや関係者ら、1人1人にねぎらいの言葉をかけたという。

 昭恵氏の対談相手で、重度障害者の佐藤仙務(ひさむ)さん(26=会社経営)は「何度もお話ししているが、印象は普通のおばちゃん。障がい者や福祉にも関心があり、周りで昭恵さんのことを悪く言う人はいない」と明かした。【太田皐介】