サッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会でも話題となった「歓喜のダイブ」で知られる大阪の道頓堀川へ、知人男性(23)を投げ落とし、死亡させたとして大阪府警南署が12日に、大阪府在住の風俗店店長泉谷卓宏(いずたに・たかひろ)容疑者(33)を殺人容疑で逮捕していたことが、14日、分かった。

 同容疑者は「酔った悪ふざけで飛び込みをあおったら、川に落ちた」と容疑を否認している。

 同署はまた、この日、一緒に現場にいた37歳男性と21歳女性を重過失致死と犯人隠避の容疑で逮捕。2人は「泉谷(容疑者)に頼まれ、(被害者が)自分で落ちたとウソをついた」と話し、容疑を認めている。

 同署によると、被害者は、泉谷容疑者が店長を務める店の従業員で、4人は11日午後10時半ごろ、数軒で飲酒した後、道頓堀川にかかる相生橋脇の遊歩道を通りかかった。その際、泉谷容疑者が被害者を「お姫様だっこするような形」で抱え、道頓堀川に投げ落としたという。

 3人は、動画を撮るなどして被害者を引き上げようとはせず、悪質。5分後になって、泥酔していた被害者が川に沈んでいく様子を見て「男が川に落ちて、上がって来ない」と119番通報したという。

 転落から約30分後、駆けつけた救急隊員によって引き上げられ被害者はその後、搬送先の病院で死亡が確認された。水深は当時、3・4メートルだった。

 3人は当初、男性が勝手に転落したと口裏を合わせていたが、警察が付近の防犯カメラを確認。泉谷容疑者が被害者を抱きかかえ、投げ込む様子が映っていたことが証拠となった。

 道頓堀川には東西に複数の橋がかかり、近くの橋では、日本代表がサッカーW杯で決勝進出した今月初旬にも、飛び込む人が続出したと報じられた場所。同署は「(飛び込みの)メッカ、風物詩になっている」と指摘し、事件当時も通行人は多数いたものの「『またか』という感じで、危機感を持っていないから通報されなかった」と話した。

 川へのダイブ報道が相次ぎ、飛び込みが珍しくなくなっている現状があり、同署はこれを不安視。「最も危惧していたことが起こった。飲酒して飛び込むことは死と隣り合わせ。お酒を飲んで飛び込むのは、絶対にやめてほしい」と強く注意を喚起した。

 また、通行人に対しては「(川の中に人を見かけたら)浮輪を投げたり、通報して欲しい。関心を持って、おもしろがらないで手を差し伸べて欲しい」と呼びかけている。