東日本大震災発生から8年を前に日本記者クラブ取材団の一員として、東京電力福島第1原発や全町避難が続く大熊町に入った。第1原発は除染が進み、2号機、3号機の間も防護服や全面マスクなしで歩けるようになった。大熊町は新元号となる5月、8年ぶりに町役場が戻る。110万トンの汚染水、廃炉まで40年という気が遠くなりそうな作業が続く中、いくつかの明るい話題があった。

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福島第1原発は、1号機から4号機を望む高台が昨年11月からヘルメット、マスク、手袋が不要になった。2号機と3号機の間や、4号機建屋前も防塵(ぼうじん)マスクとヘルメット、眼鏡を着用すれば、防護服なしで歩けるようになった。

放射線量は、高台で毎時110~120マイクロシーベルト。2、3号機の間は毎時250~300マイクロシーベルトだったが、水素爆発が起き、核燃料がほぼ全量落下した3号機に近づくと、350マイクロシーベルトに上昇し、取材団や東電の職員が身に着けた線量計から警戒音が鳴った。一般の人の年間被ばく限度は1000マイクロシーベルト。3号機近くは3時間で限度に達する線量で、バスを降りての取材は5分だった。

全域がレッドゾーンで、約20キロ離れたJヴィレッジから全面マスクに防護服、線量計を下げて出動した第1原発は、一般の作業服と防塵マスクで作業できるグリーンゾーンが全体の96%まで広がっている。

こんな目に見える成果の一方、汚染水は依然1日100~150トン発生している。1000トンのタンクが1週間~10日で1個増える計算だ。総量110万トン、巨大タンクは947個になった。東電では137万トン分のタンクを確保する計画を立てているが、それも5~7年でいっぱいになる。

昨年、廃炉の方針が決まった第2原発視察では原子炉圧力容器の真下にある「ペダスタル」を見学した。第1原発1~3号機で、溶け落ちた核燃料(デブリ)があるとみられる場所だ。第2原発は、第1原発の廃炉作業の研究モデルとしても使われている。第2原発での研究を基に、21年のデブリ取り出し開始へ向け、13日に2号機のデブリ接触調査が行われる。

◆帰還困難区域を除き、除染は昨年3月、終了した。除染で発生した土壌を最終処分するまでの間、保管する中間貯蔵施設の建設が第1原発を囲むように大熊、双葉両町で進んでいる。除染で出た土壌は1400万立方メートル。1600ヘクタールの用地が必要になるが、買収や期限付き地上権契約で取得できたのは67・3%にとどまっている。搬入量は本年度が180万立方メートル、19年度は400万立方メートル。21年度までの搬入完了を目指すが、30年以内に県外に置くとした最終処分場は決まっていない。