桜田義孝前五輪相が「(震災の)復興以上に大事なのは議員」発言で、即時更迭された問題から一夜明けた11日、与野党から批判が続出した。桜田氏をかばい続けた末の更迭劇となった安倍晋三首相は、21日投開票の衆院2補選、統一地方選後半戦への影響回避に火消しに懸命だが、政務三役の辞任ドミノは、波乱必至の「亥(い)年選挙」に臨む政権に、暗い影を落とし始めた。この日は東日本大震災の月命日。被災地からも批判の声が上がった。

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「桜田ショック」から一夜明けた11日、首相は前夜に続き、再び取材に応じた。塚田一郎前国交副大臣の「忖度(そんたく)」発言から1週間もたたない中、大臣の失言辞任ドミノ。首相は「内閣全員がより一層、身を引き締めなければならない。批判があることも真摯(しんし)に受け止めなければ」と述べた上で、桜田氏の後任、鈴木俊一衆院議員について「復興五輪に強い思いがある。信頼を回復し、五輪を成功に導いてほしい」と話した。

ただ、就任以来問題発言を連発してきた桜田氏を続投させてきたのは、首相自身。与党内でも「『桜田政局』が最悪の状態ではじけた」(関係者)との危機感が出ている。衆院大阪12区、沖縄3区の補選が告示されたばかりで、14日には統一地方選後半戦も始まる。「忖度発言」の影響が消えない中での、桜田氏の更迭。自民党の地方組織から「選挙を戦えるのか」と、不安の声が上がっている。

今年は12年に1度、統一地方選と、首相が重視する参院選が重なる「亥年選挙」。12年前の第1次安倍政権では、政治資金問題や失言などによる大臣辞任ドミノから参院選惨敗、その後も大臣辞任が続き、首相の退陣につながった。野党関係者は「辞任の理由は12年前よりたちが悪い」と指摘。今回は、桜田氏だけでなくかばい続けた首相の責任もあるとして、「問われるべきは首相の任命責任」(立憲民主党の辻元清美国対委員長)と、追及を強める構えだ。

野党は衆参両院の予算委員会での集中審議を求めたが、自民党は、桜田氏が辞任し首相も取材に謝罪の意を示したことなどから、衆院では開催要求を拒否。野党は「桜田隠しに続き、次は安倍隠しか」と反発。法案審議での徹底抗戦も視野に入れている。

桜田氏はこの日の衆院本会議に姿を見せなかった。本人不在でも、本会議では「これまで失言、放言、妄言、珍言、暴言を連発してきた。これほど恥ずかしい、資質を欠く人をなぜ任命したか。首相の責任とダラダラ擁護した責任は重い」(立憲民主党の菊田真紀子氏)など、桜田氏と首相への批判が相次いだ。【中山知子】