将棋の最年少プロ、藤井聡太七段(16)が12日、都内で行われたインターネットテレビ「AbemaTV」の対局企画「AbemaTVトーナメント」の収録に参加した。

初のタイトル獲得を数年以内で目指す意欲を示した。また、陸上男子100メートルで日本人2人目の9秒台をマークしたサニブラウン・ハキーム(20)についても触れた。

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藤井七段は収録後、一部の対局を解説した羽生善治九段(48)とともに、穏やかな表情で取材に応じた。令和に入り、当面の具体的な目標について「タイトルと言いたいところですが」と前置きした上で「実力がなければ成し得ないことなので、まず実力をつけたい」と控えめに挙げた。

タイトル獲得の目標時期を聞かれると「何年で、というのは難しい」と明言しなかったが「数年間で、しっかりとした実力をつけたいと思います」と近い将来での獲得に意欲を示した。

常にタイトル獲得は念頭にある。4月末に行われたイベントでも、谷川浩司九段から「最年少タイトル、1年くらいで結果が出せるかな」と振られると、「はい」とうなずいた。最年少記録は屋敷伸之九段(47)の18歳6カ月。この日、隣で藤井の言葉を聞いていた羽生は「他にも強い人が出てきていて、どうなるか分かりませんが、朝日杯も連覇してますし、いつそういうこと(=タイトル獲得)になってもおかしくない」と太鼓判を押した。

同様に、新時代で活躍を期待されるアスリートにも刺激を受けている。この日、日本人2人目の9秒台をマークしたサニブラウンについては「陸上の短距離走は0・01秒を争う世界。上を目指すのは、かなり精神力がないとできないこと。そういう姿勢を見習いたいと思います」。巨人坂本勇人(30)の開幕36試合連続出塁セ・リーグ記録更新には、自身が記録したデビュー29連勝を重ね合わせた。「自分も連勝した時にはプレッシャーを感じず、伸び伸び指せたのが良かったですが、連続記録は途切れたらおしまいなので、すごいことだと思います」。

「まずは実力をつけたい」。控えめな言葉を繰り返したが、令和に入り、実力からも、初のタイトル獲得はすでに射程圏内に捉えている。一方、この日は母の日。「感謝の気持ちを伝えたいと思います」と、16歳らしいはにかんだ笑みを浮かべた。【近藤由美子】