ギャンブル等依存症対策基本法の施行後、初めての啓発週間が始まっている。同法は、安倍政権が成長戦略の一環と位置づける「カジノ」の弊害に対する懸念や不安の声を受けた議員立法で、国や地方自治体に広報や啓発事業の実施を求める条文がある。

だが、その初年度の政府の事業について、依存症問題に取り組む民間団体からは「いったい何のための週間なのか」と指摘する声が上がる。政府は、どんな事業を実施しているのか。

   ◇   ◇   ◇

「やめられない? それはギャンブル等依存症!?」。啓発週間(14~20日)スタートの1日前、今月13日付読売新聞の1面に、そんな文言の広告が掲載された。依存症対策基本法が、政府に「趣旨にふさわしい事業が実施されるよう努めるものとする」(同法10条)と求める啓発、広報事業の一環だ。内閣官房の依存症対策推進本部によると、順次、全国73紙に掲載。12日には、衛星波の政府広報番組で、依存症に関する施策を紹介。インターネットのニュースサイトにも「やめられないのは依存症かも?」とする広告を出稿したという。

啓発週間については、同法だけでなく、4月に閣議決定された「依存症対策推進基本計画」でも「積極的に広報活動などの事業を行っていくよう努める」と盛り込まれた。昨年7月の参院内閣委員会で、法案を提出した議員は「啓発ポスターの作成」「フォーラム等のイベント開催」を想定していると答えている。安倍晋三首相も昨年7月の同委員会で「ギャンブル等依存症に陥る人を生じさせないよう、政府一丸となって必要な取り組みを徹底的に講じていく」旨、述べた。

しかし、新聞広告は読売新聞で2段ほどの大きさ。衛星波では、30分の番組内のコーナーでおよそ5分。競馬や競輪など公営ギャンブルを所管する各省庁は「本省としては、特に予定していない」(経済産業省)、「監督官庁の立場から、主催者を指導している」(農水省)などとしており、「積極的」「政府一丸」とは言い難い状況だ。

「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表は「初めての啓発週間に合わせて大きな予算がつくと思ったのに、何もないに等しい」と怒りをにじませる。その上で「政府は依存症対策をやりますと言っていたが、カジノ解禁を急ぐための方便だったのだろう。回復支援などの施策も含め、政府の依存症対策には裏切られた思いだ。このような状況でのカジノ解禁には、懸念しかない」と話している。【秋山惣一郎】

◆ギャンブル依存症等依存症問題啓発週間 国民に依存症問題への関心と理解を深めるため、として設けられた。議員提案した中谷元氏(自民)は、新社会人や大学生となった人たちに依存症の問題に対する理解と関心を深める機会を作る。1954年(昭29)5月18日の風営法改正で「ぱちんこ屋」の表記が盛り込まれたことから、毎年同月14日からの1週間とすると説明した。