2019年はラグビーの年だった。W杯準々決勝「日本-南アフリカ」で今年の全番組1位となる視聴率41・6%を放送史に刻み、日本代表チームのスローガン「ONE TEAM(ワンチーム)」は流行語大賞に輝いた。

列島に熱戦を届けたテレビマンは“想定外”の激アツ展開をどう見ていたのか。日本テレビ中継責任者、渡辺卓郎プロデューサーに聞いた。日刊スポーツは「2019年の風景 令和新時代・日本のニュースから」で、今年の現場を振り返る。

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9月6日に行われた壮行試合「日本×南ア」の視聴率は6・5%。開幕2週間前とは思えない心細い数字で、渡辺氏は「当事者としてかなり衝撃的だった」と苦笑いで振り返る。「今年30%を超えたスポーツイベントは、箱根駅伝と大坂なおみさんのテニス全豪オープン決勝のみ。4年に1度、それも自国開催のラグビーW杯でなんとしても1番の視聴率をとりたいと『目標35%』を掲げていたので、相当あせりました」。

一方で、やることはすべてやった自信もあった。「ZIP!」「スッキリ」などの帯番組でのコーナーや、看板バラエティー番組への代表選手出演など、開幕100日前から延べ876番組の大量プロモーションを行ってきた。開幕戦の「日本×ロシア」が18・3%で「ラグビー大丈夫かもと、ホッとしました」。

最初にブームの風を感じたのは、開幕翌日の「ニュージーランド×南ア」という。「海外同士なのに12・3%とって、競技の面白さが伝わったんだと手応えがありました」。「日本×アイルランド」での勝利で、空気が一気に動くのを感じた。「日本、本当に強いぞとテレビ各局がどんどん取り上げ、視聴者のラグビー偏差値をどんどん上げてくれる流れを感じました」。全試合の最高視聴率は、準々決勝「日本×南ア」の41・6%。NHKの数字だが「率直にうれしい。テレビ業界全体にとっても励みになりました」。

来年は東京オリンピック(五輪)。7人制ラグビーも注目を集める。「マイナーをメジャーに。15年大会のブームを根付かせられなかった反省を糧にしないといけない。この流れをうまくつないでいきたい」と話している。

○…渡辺氏が「W杯の盛り上がりに大きな力となった」と特筆するのが、TBS日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」の存在だ。

慶大ラグビー部出身の福沢克雄氏が演出を手掛け、元日本代表主将、広瀬俊朗氏が俳優初挑戦でエース役を演じるダイナミックな挑戦。臨場感あふれるラグビーシーンと、広瀬演じるSO浜畑譲のスター性で“にわかファン”を大量獲得し、開幕に弾みをつけた。「ドラマだから獲得できるファン層がある。骨太で、ラグビーの魅力を真芯でとらえたドラマをやってくれたのは本当にありがたかった」。

広瀬を「しゃべくり007」に招き、最終回の告知を日テレが行ったことも話題になった。渡辺氏は「ドラマに何かしら恩返しができないかと、ああいう形になりました」。大学ラグビーのスター選手だったTBS佐々木卓社長も、定例会見で「ドラマが始まってから、お互いのアイコンタクトという感じで現場でアイデアが浮かんだのかなあと思う」と話している。

米津玄師が歌うドラマ主題歌「馬と鹿」をNHKがBGMで使う場面もあり、テレビ業界全体が「ワンチーム」になったのは特徴的。「テレビの元気感を醸成できたのはいい経験になった」と話している。

<フィーバーメモ>

◆米津玄師が歌うTBS日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」主題歌「馬と鹿」が第102回ドラマアカデミー賞最優秀ドラマソング賞を受賞。CDとダウンロードが合計110万セールスを突破(11月現在)

◆日本代表戦1次リーグ4試合の番組視聴人数(ユニークユーザー数)が7903万人を記録。

◆文化放送が、準々決勝「日本×南ア」でラジコアクセス数トップシェアを獲得。瞬間最高シェアは後半で日本が南アにペナルティーゴールを決められ、3-14となった瞬間(午後8時55分)の28・25%。

◆日本テレビとNTTドコモが、「ニュージーランド×南ア」の一部で5Gプレサービスをテレビ生中継に初めて利用する試み。

◆「ONE TEAM」が今年の「新語・流行語大賞」に。「4年に一度じゃない。一生に一度だ」「にわかファン」「ジャッカル」「笑わない男」を含め5ワードがノミネート。

◆日本代表戦5試合の推計視聴人数が8731万人を記録(ビデオリサーチ調べ)。

◆全45試合のチケット販売率99・3%(184万枚)はW杯最高記録。全国16カ所でのパブリックビューイング動員数113万人もW杯記録に。

◆12月11日、選手28人が東京・丸の内のオフィス街をパレード。おそろいのスーツで約800メートルを歩き、沿道には約5万人が詰めかけた。