新型コロナウイルスの感染拡大で列島が「自粛ムード」に包まれる中、東京マラソンが1日、強行された。例年なら多くの市民ランナーが東京中の道路を埋めるが、一般参加は中止。3万8000人を予定していた参加者はエリートランナーの200人だけで、例年の「お祭り」ムードもなかった。
普段は100万人以上が集まる沿道も、この日は閑散としていた。ゴールの東京駅や浅草や銀座などはもともと感染対策で人通りが少ない上、係員が「観戦はテレビかネットで」と呼びかけた。沿道のファンは、7万2000人(主催者発表)。日本陸連の尾県貢専務理事は「もう少しお願いできる時間があれば」と話したが、例年に比べ10分の1以下の寂しさだった。
日本陸上界と東京都にとっての大イベントだけに、対応は速かった。2月13日に国内で初の感染者が出たことを受け、同17日は一般ランナーを参加中止に。表彰式の簡素化など規模を縮小するとともに、徹底した感染対策も準備した。
2月25日に政府が大規模イベントの自粛を要請、さらに27日には全国の小中高校などに休校が要請されるなど、事態は急変した。スポーツイベントも中止が相次いだ。しかし、レースは代表選考で中止できず、延期も現実的ではない。「すべてのメリットとデメリットを考え、開催に踏み切った」と同専務理事は、苦しい決断を振り返った。
東京マラソン財団の大森文秋事務局長は、関係者に用意した7万枚のマスクと200リットルの消毒液の未使用分を「東京都を通じて福祉施設などに寄贈する」と話した。尾県専務理事は開催への批判を認めながら「歴史的なレースで、沈滞した日本のムードを少しでも元気にできた」と前向き。日本記録で東京オリンピック(五輪)代表に近づいた大迫傑は「開催される以上は、集中して臨みたかった」と言葉を選ぶように慎重に話していた。
東京都の小池百合子知事は1日、東京マラソン終了後、取材に応じ、沿道での観戦自粛が呼びかけられる中でも、沿道に足を運んだ人が多かったことについて問われ「マスクもつけて、大変ご協力をいただいた」と述べた。また大会規模の縮小に伴い、スタッフやボランティアが使わなかったマスクや消毒液などを、東京マラソン財団から受け取ったとして「有効に生かしたい。医療関係や学校など、今後必要とされるところに配布されることになる」と話した。参加が見送られた一般ランナーには、あらためて陳謝した。

