東京都の小池百合子知事は10日、政府の緊急事態宣言を受けて休業要請を行う具体的な施設や店舗を正式に発表した。

対象を決めるに当たり、感染拡大防止の観点から「広範囲」を求めた都と、経済優先で慎重な国の調整は難航。最後は「大人の妥協」で歩み寄ったが、小池氏は国の“横やり”に「権限は代表取締役(知事)にあると思ったら、天の声が聞こえて私は中間管理職になった」と、不満を漏らした。

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休業要請の対象となったのは、ナイトクラブやバー、カラオケボックスやパチンコ店、床面積1000平方メートルを超える商業施設など、幅広い施設や店舗。医療機関やスーパー、コンビニ、公共交通機関など「社会生活を維持する上で必要な施設」は除外された。

当初、都が対象案に含めたホームセンターや理美容室は政府との交渉で、対象から外れた。夜間外出防止へ、居酒屋を含む飲食店の営業は午前5時~午後8時で、酒の提供は午後7時まで。要請に応じた中小企業には、規模により50万~100万円の協力金を払う。

小池氏は会見で「都の感染状況は他の道府県より突出している。多くの人が往来し、日本有数の歓楽街がある首都の特殊性も勘案しなければ」と、広範囲に休業を要請した理由を語った。当初、安倍晋三首相が緊急事態宣言した7日に公表するはずが、あまりの広範囲に、経済への影響に加えて、都から地方に人が流れて感染リスクが広がりかねないと、国があわてた。もともと、つかず離れずの静かな緊張関係にある政府と小池氏の主導権争いも絡み、調整は難航。最後はお互いが妥協したが、発表は10日にずれ込んだ。

最終的には広範な要請対象を勝ち取った小池氏だが、国の対応に不満を示した。「様子を見て広げるのではなく、最初に大きく構えて狭める。それが普通の危機管理ではないのか」と指摘。「都は前もって(案を)準備したが、途中から国との協議が入った。それぞれ地域の特性があるから、知事に権限を与えたのだと思う。代表取締役社長と思っていたら、天の声が聞こえて私は中間管理職になったみたい」。政府の対応を問う質問には「政府に聞いてほしい」と、返した。

11、12日は緊急事態宣言発令後、初の週末。都の1日の感染確認数は連日最多を更新し、今回の措置の効果が薄ければ責任も問われる。「感染防止の役割を担うのは私という気持ちを持って」。小池氏は都民に呼びかけた。 【中山知子】