新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず、苦しむ1人親世帯を支えようと、弁当の無料提供を企画する支援の輪が大阪市内で広がっている。7日、各社が取材に応じた。

大阪市都島区の「肉バル&バーガー・セブンデイズ京橋」は16、17日に同区内と、城東区にある他の3店舗と同時に無料提供を実施する。店主の古木佑介さん(40)も母子家庭だったことから、1人親世帯の苦労を身にしみて感じていた。当時、弟と3人暮らしで「(母は)めちゃくちゃ大変でした。1人で家庭をまかなわないといけなかった」と振り返った。

ましてや、休校で給食がなくなれば、当たり前だが、子供の食事は親が準備しなければならない。1人親世帯の場合、平時であっても仕事と家庭の両立で負担は大きい。近隣4店舗で同時に実施するのは、エリアが分散しており、より広い地域の人に提供できるとの考えからだ。

20食または、10家庭限定で「肉バルカレー」を提供する同店も、営業自粛で決して順調ではない。それでも「20食ぐらいだったら用意できる。今後も無理のない範囲で役に立ちたい」と話した。

また、JR大正駅近くにある「炙り屋陶山 大正店」でも「弁当付き居酒屋すやま」と題した店で、14~15日の2日間、20食または10家庭限定で提供を実施する。同店の店主は、1人親世帯の親から「料理するのがしんどい」との声や、コンビニや冷凍食品に頼っているという話を聞き「ノウハウはあるので、手作りの弁当を食べていただきたい」とサービスを決めた。

同店ではもともと、居酒屋を利用した客を対象に、翌日に無料で弁当を届けるというオリジナルのサービスを行っていた。だが、コロナの影響で営業を自粛。経営3店舗中、1店舗のみ、大阪府の要請に沿って時間短縮で営業を続けていたが、何度となく「なんで営業してんねん」との電話があり、やむを得ず休む日もあったという。売上は7割減。苦しい状況で廃業も考えた。

「店がしんどくて、自分のことしか考えていませんでした」と振り返る。鶏肉の通販などで「ギリギリの営業」を続けていた。

そのころ、転機が訪れた。ゴールデンウイーク前だった。「小学3年生ぐらいの子が、自分のお小遣いで鶏肉を買っていったのを見て、『自分(のこと)だけ(考えていたの)じゃあかんねんな』と思いました」と言い、弁当の提供を思いついたという。

これまでに数回、弁当の無料提供を行った。飲食店の休業、学校の休校などで行き場がなくなった食材を買い取り、通販で販売。利益が出たら弁当で地域に還元する。営業資金獲得のため融資を申し込むなど、先行きは不透明だが、店の常連客からの「来られへんけどがんばれよ」という声、弁当を届けた相手からの「助かるわ」という笑顔を力に変え、営業を続ける。【南谷竜則】