本格的なお盆休みに突入したが、新型コロナウイルス感染再拡大の影響で、旅行を控える人も少なくない。政府の観光支援事業「Go To トラベル」を含めた旅行業界の現状分析とともに、感染に十分気をつけながらも可能な範囲で楽しめる旅について、航空・旅行アナリスト鳥海高太朗氏(42)に聞いた。

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鳥海氏は新型コロナウイルス感染再拡大の旅行業界への影響について「4、5月がどん底だったが、回復のスピード感が想定以上に鈍っている」と分析する。

政府の観光支援事業「Go To トラベル」が先月22日から、東京都の発着を除外する形で開始した。鳥海氏は「感染再拡大で自主的に旅行を取りやめる人が多く、『Go To-』があっても、宿泊施設の予約は埋まっていない」と話す。さらに「今、『Go To-』は出張者のためのものになっている。緊急事態宣言発令中は出張を自粛していた会社も、今はあまり取りやめていない」と指摘。「出張者は必要なものしか、お金を落とさない。このままだと本来、『Go To-』で見込めた経済効果が薄らぐ危険がある」とみている。

感染防止策を講じた上で、今、可能な旅として鳥海氏は「地元で楽しむ旅」を提案する。「普段なら絶対に行かない地元のホテルや旅館をお得に泊まってのんびりと過ごすことで、地域の魅力の再発見につながるはず」と説明する。

鳥海氏は都民以外へのお勧めに、自治体が補助する地元住民対象の割引プラン利用を挙げた。「北海道は『どうみん割』など、都以外のほとんどの自治体が打ち出しています。最大5割引きで『Go To-』と併用すれば実質7~8割引きになる場合もある」と話す。都民へのお勧めには都内施設独自の都民限定プランを挙げた。「スカイツリー半額や高級ホテルを含む一部宿泊施設の都民限定宿泊プランがお得です」。

一方で、「with コロナ」時代における旅行の問題点の1つに、旅行会社のキャンセル料の取り扱いについて挙げた。「旅行会社がキャンセル料を取るのは、国の旅行業法で定められているからです。急な感染拡大から旅行を控えようと思っても『キャンセル料を取られてしまうから行く』と、無理して行く人も少なくない。キャンセル料を取らない仕組みを国が作れば、感染拡大防止の抑止力にもなるはず」と話している。   【近藤由美子】

〇…鳥海氏は本格的なお盆休み初日となった8日の東京・羽田空港の混雑状況について「通常の半分以下だが、人の動きはある」と話した。緊急事態宣言発令中だった今年のゴールデンウイーク(GW)初日の同空港と比較すると「GW初日の人出は皆無。今は混雑まで至らないものの、家族連れなども結構いました。ある程度はにぎわいがあった」とした。さらに「GWに比べると、単身赴任の人が結構帰っていますね。緊急事態宣言中は戻ること自体、自粛を求められていたが、今はそこまで厳しくないし、ほとんどの人が注意を払っている」と分析した。