政府は7日、3度目の緊急事態宣言を今月31日まで延長することを決定した。11日に期限となる東京、京都、大阪、兵庫と、新たに愛知、福岡(12日から適用)を追加した6都府県が対象。酒類を提供する飲食店などの休業要請は継続するが、デパートなどの大型商業施設やイベントは一部を緩和する。一方で専門家からの提言を却下、またも押し切るなど、延期と緩和策の実効性が問われる。

   ◇   ◇   ◇

菅義偉首相は7日夜の会見冒頭で17日間という短期集中の緊急事態宣言について「東京や大阪の人流は4月初めと比較し、夜間は6、7割、昼間は4、5割程度減少した」と成果を強調した。一方で「新規感染者数は東京、大阪ともにステージ4を大きく超える水準」と不発の事実を認めた。

午前に招集し、諮問した専門家らで構成される基本的対処方針分科会では、またも専門家の提言を却下し、押し切った。4都府県に福岡、愛知の2県を加える政府案に対し、多数の専門家は別の1県も追加することを提言した。座長で新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は分科会後、衆院厚労委員会で「ある県については今回、政府の緊急事態宣言の追加県には入ってなかったけれども、メンバーの多くの人が、この県も加えるべきだと申しました」。

だが、提言は受理されなかった。尾身会長は「政府は政府なりに、その県を入れない理由というのを説明した」と経緯を振り返り、「私が座長として提案したのは無条件で合意したんじゃなくて、多くのメンバーが追加した方がいい、ということは議事録に残した」などと舞台裏を明かした。

3度目の緊急事態宣言を決定した4月23日の諮問会議も同じ決着だった。「短期集中」を大前提とする政府に対し、専門家からは慎重論が相次いだが、政府の強い意向に押し切られた。

結果は緊急事態宣言は延長され、対象地域の拡大も余儀なくされた。追加を含め、6都府県を対象とする緊急事態宣言の延長を発表した上で埼玉、神奈川、千葉、愛媛、沖縄、宮城の各県に適用されている「まん延防止等重点措置」に北海道と岐阜、三重両県を加えて今月31日まで延長し、宮城は12日から解除される。

緩和策も導入する。飲食店の酒類やカラオケ店への休業要請は継続し、お客による酒類の持ち込みを規制する。デパートなどの大型商業施設(床面積1000平方メートル以上)の休業要請は緩和され、午後8時までの時短に見直される。スポーツや音楽イベントは5000人か、収容率50%のいずれか少ない方の入場を認め、午後9時までの時短開催を認める。短期決戦は結局、約1カ月(37日間)に延長されたが、同時に緩和策を打ち出すなど、実効性にはまたも懸念が残った。【大上悟】