菅義偉首相は14日、北海道、岡山、広島の3道県に対して緊急事態宣言を追加発令することを発表した。

期間は16日からで、解除期限は現在発令中の6都府県と同じ31日まで。さらに、まん延防止等重点措置を群馬、石川、熊本の3県に追加適用することも発表し、期間は16日から6月13日までとした。専門家からの強い反対を受けたことで、政府は異例の方針転換に踏み切った。

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専門家の意見を押し切り続けてきた政府が、ついに専門家の強い反対意見に屈した。菅義偉首相は午後8時すぎからの記者会見で緊急事態宣言の追加発令の経緯を「専門家から、より強いメッセージを出すことが必要と意見があり、尊重して判断した」と説明した。その一方で今回は新型コロナ対策分科会の尾身茂会長の存在感が際立っていた。菅首相と並んで登壇した尾身会長は発令を強く提言した理由を「ステージ4(感染爆発)、変異株による感染拡大の懸念。病床のひっ迫状況は数が示すより、さらに厳しい。強いメッセージが今の状況を改善するのに必要」と具体的に示した。

政府は北海道の感染拡大について、札幌市中心で「全道にまん延しているわけではない」と消極的だった。当初は、群馬、石川、岡山、広島、熊本の5県にまん延防止等重点措置を追加適用する方針だった。

それが、この日の基本的対処方針分科会で、専門家の「ちゃぶ台返し」で、ひっくり返った。まん延防止等重点措置のみの諮問に反対や異論が噴出し、初めて政府の諮問が却下された。混乱の中で急きょ、緊急事態宣言の諮問に切り替え、菅首相も押し切られた。

これまでは政府が専門家の意見を押し切ってきた。前回7日は尾身会長ら多くの専門家が福岡、愛知以外に1県追加を提言したが政府は却下。前々回の4月23日は、専門家の指摘を振り切って、17日間の短期集中で発令も、結局は専門家の想定通りの延長となった。

専門家が看過できないほど事態は深刻化している。そんな中で菅首相は東京五輪・パラリンピック開催に前のめりだ。開催可否についても「感染対策をしっかりして安心安全な大会は可能」と繰り返すだけ。開催のメリットとデメリットを問われても「世界最大の平和の祭典であり、国民のみなさんに勇気と希望を与える」としたが、デメリットには一切、触れなかった。開幕まで2カ月あまり。緊急事態宣言の拡大とともに、開催可否の判断の最終局面が近づいている。【大上悟】