「将棋日本シリーズ JTプロ公式戦」決勝、豊島将之JT杯覇者対藤井聡太竜王(王位・叡王・棋聖=19)戦が21日、千葉市の「幕張メッセ」で行われた。持ち時間10分の早指し頂上対決は、初制覇を目指した藤井を豊島が95手で下し、2年連続3回目の優勝を果たし、優勝賞金500万円を獲得した。史上最年少4冠との対決を7連敗で止め、先輩タイトル保持者としての意地を見せた。

豊島が踏み込んだ。角換わりからひるまず攻める。最後の藤井の猛攻も自分の玉は大丈夫と読んでいた。「できるだけ前に出る手を選んだ」と対局後に話した。

今年17回目の対戦。2017年(平29)8月の棋王戦挑戦者決定トーナメントから昨年の王将戦挑戦者決定リーグ戦まで6連勝しながら、今年に入って3勝13敗。タイトル戦でも王位戦7番勝負は1勝4敗で挑戦を退けられた。叡王戦5番勝負は2勝3敗、竜王戦7番勝負は4連敗と、防衛戦も敗れた。13日に竜王を失って対藤井戦7連敗となったが、趣味のNBA観戦でリフレッシュした。

20日、都内のホテルで行われた決勝前日会見で、「(藤井竜王は)タイトル戦で指す前よりもさらに実力が上がっている。タイトル戦の結果から相当頑張らないと厳しい」と語った。対局前に舞台上で行ったあいさつで、「無倦(むけん)」と揮毫(きごう)した色紙を見せた。飽きることなく努力を続けるという現在の心境を表現した。

将棋界は、藤井を倒さなければタイトル獲得はないという図式になってきた。「実力をつけないと」と対局後の勝利者会見では繰り返した。「優勝を励みに、またタイトル戦線に出られるように頑張っていきたい」。JT杯連覇は、復活への足掛かりだ。【赤塚辰浩】

◆JT杯 前年度のJT杯覇者である豊島将之竜王(31)と、今年2月28日時点での8大タイトル(竜王・名人・王位・王座・棋王・叡王・王将・棋聖)保持者、20年の賞金ランキング上位者の計12人による勝ち抜き戦。本来は地方を転戦してトップ棋士同士の対戦をすべて公開対局で行う。コロナ禍の影響で、今回は1回戦2局と準決勝以降が公開対局となった。優勝賞金500万円、準優勝150万円。