将棋の最年少5冠、藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖=20)が広瀬章人八段(35)の挑戦を受ける、第35期竜王戦7番勝負第4局が8、9の両日、京都・福知山城天守閣で行われ、先手の藤井が95手で広瀬を破り、シリーズ対戦成績を3勝1敗とし、初防衛にあと1勝とした。

「ひふみん」こと加藤一二三・九段(82)の「ひふみんアイ」をお届けします。

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藤井竜王の「横綱相撲」でした。広瀬八段の攻めに対応し、切り返すと反撃の余地を与えずに押し切ってしまうのですから。終盤、敵陣の2筋に歩が刺さっては「勝負あった」。受けから攻めに転じるパターンは、めっぽう強いです。

強さを際立たせてスピード決着になったのは、挑戦者が3筋の桂を歩で守るべき局面で、8筋や4筋の歩を成り捨てて仕掛けたからでしょう。踏み込んだ攻めが大局観、判断の誤りでした。成算があってこそでしょうが、負けた瞬間、「おかしいな。攻めていったんだけど」と微妙な気持ちだったに違いありません。

言い換えれば、攻めを空回りさせた藤井竜王の構想力が勝っていました。望外の会心の勝利で、初防衛はかなり濃厚です。

広瀬八段はもともとゆったり力をためて勝つ棋風なのですが、今局は突っ張った将棋が目立ちます。後がなくなった先手番の第5局でどんな作戦に出るのか。注目しましょう。