衆院山口2区補選(4月11日告示、23日投開票)に、父岸信夫元首相補佐官の後継者として出馬する長男の岸信千世氏(31)は5日、地元の岩国市のホテルで開いた会合で、自身に対するさまざまな評価を念頭に「世間にはいろいろな声が聞こえますが、こうした声の1つ1つに惑わされず、右往左往せず、できることをやる」と決意表明した。

「精いっぱい1歩1歩、着実に歩みを進める。こうした形で、今回の選挙は奇をてらわずに頑張ってまいりたい」とも述べた。

信千世氏をめぐっては、当初立ち上げた公式ホームページに、華麗なる面々がそろう一族の家系図を掲載し、世襲批判を受けて閉鎖。新たに立ち上げたホームページのトップには「後援会への入会申し込みフォーム」の表記があり、個人情報を記入しないと見ることができなかったため、こちらにも批判が集まった。本来の活動以前の段階で、別の意味で注目を集める形となっている。

公募を経たとはいえ、事実上の世襲候補である信千世氏。この日も「おじ(安倍晋三元首相)、そして父が政界からいなくなり大変不安」と述べた上で、父親にゆかりのある後援会や事務所関係者らが残ってくれたとして「(この形で)戦えることをありがたく思います」と、悪びれずに感謝した。

政策面では、少子化問題や地域経済、人口減少などの課題に触れ「地道かもしれないが、1歩ずつしか解決していくことはできない。こういう気持ちで、今回の選挙を戦ってまいります」と訴えた。

山口4区の下関市に続いて、信千世氏の応援で岩国市を訪れた岸田文雄首相は「自民党が、自信と誇りをもって公認した」とアピール。岸田内閣で防衛相や首相補佐官を務めた父の岸氏に触れ「その岸さんが最も頼りにし、近くで支えてこられたのが信千世さんだ。ほんとうに誠実な、まっすぐな好青年。なにより腰の低い人だなと思ってきた。地域や日本の未来への思いも熱い」とほめちぎる場面も。「今回の補欠選挙は、未来を切り開くのがどの政治家、政党なのかが問われる選挙。未来を切り開くのは自民党だと訴え、多くの人に力を与えてほしい」と期待を示し、最後は信千世氏らとともにガンバローコールも行った。

信千世氏は慶大卒。フジテレビの記者を経て岸氏の秘書、防衛相時代の秘書官を歴任した。

山口2区補選には、野党側も候補者の擁立を調整している。【中山知子】